体験版・レズへの誘惑

レズへの誘惑

 福岡市の不動産会社に勤める古妻新江(ふるつま・にいえ)は、今年三十歳になるキャリアウーマンだが、結婚はしている。
二十五で結婚した彼女は、夫も宅地建物取り引き主任者の資格を持つ同じ会社での社内恋愛で、夫は一つ年上だ。
古妻新江の容貌は、いかにも不動産業者の女性という感じで、どちらかというと男性的だ。
というのも、そもそも不動産業界とはタフさが要求される。建物の部屋を案内するビルにエレベーターが付いているとは、限らない。
そんな時は、階段を上って部屋を案内したりする。
女性的過ぎてもリスクはあるだろう。それは、顧客を案内した部屋に二人きりとなった場合、男性客なら場合によっては女性仲介者をその場に押し倒して、性行為に及ぶ場合もないとは限らないからだ。
 
この点、新江は眼はパッチリして大きいし、胸も尻も豊かなのだが、どこか男性的な雰囲気があり、それで案内した顧客と問題になった事はなかった。

同僚の秋谷町代は、博多美人で二十二で新江とともにその不動産会社「マンアパ・ナンバーワン」に入社した。秋谷はおしとやかで、おとなしく手の指も細く白かった。実家は呉服屋だという。手の指と同じく顔の色も白い。胸はほどよく膨らんで、尻がいささか大きかった。背は百五十七センチで、尻の肉が多いという他は、普通の体型で声も細々としていた。
ある時、ロッカールームで新江の右の肘が町代の程よい乳房に当たったら、
「いやん。感じちゃう。」
と色っぽい声を出して、のけ反った事があった。新江は、
「ハハハ、町代、おっぱいが感じやすいのね。」
「そうかな。新江の肘が硬かったからよ。」
「そうね。わたし、空手していたのよ。肘で瓦を何枚も割れるわ。」
「すごーい。わたし、茶道部だったの、大学で。」
「それで特に、おしとやかなのかしら。」
「そうかも。」
町代の目は、そんなに大きくはない。細い目の方だろう。唇も薄いし、眉毛も薄い。アンダーヘアも薄いと思われる。
恥毛が濃いと情愛も濃いとか、言われるのだが、では秋谷町代は情が薄いのか。というと、そうかもしれない。
彼女の押し出しの弱さからか、入社して半年の間の成績はあまりよくなかった。
部長の星垣銀一は四十五歳の男性だが、スマートな体系を維持した背の高い紳士風の外見で彼女に、
「こんな成績では、うちとしては苦しいんだよ、秋谷さん。」
とぼやいた。
「すみません。でも、なんとかします。」
町代は薄い眉を引き締めて、きっぱりと答えた。

その日に来た客は五十代の男性で、単身赴任だった。やはり会社近くのマンションを希望していたが、どれも高い家賃ばかり。そのでっぷりと肥った男は、汗をハンカチで拭うと、
「とにかく見に行かないと、わからないね。三十万円でもいいからさ。」
町代はそれらの中で、一番高い家賃の物件をパソコンで拾い出して見せると、
「こちらは、どうですか。」
「ああ、いいね。見に行こう。」
「はい。それでは、ご案内します。」
町代は「マンアパ・ナンバーワン」のロゴの入った白い車を運転して、当該物件の高級マンションに顧客を入れた。客は迷っているようだった。禿げた頭は、汗で光っている。その男の前に立っていた町代は、わざと大きな尻を男にぶつけるように動いた。
男は、
「おっと、」
と声を出すと、町代の肩の辺りに両手を当てて止めた。男のズボンの下にある小さいままのモノを、町代の大きな尻の肉は強く触れていた。
「きんたまつかみ」という言葉もある。町代は、男のそこを攻撃すれば今回の契約は成立すると、見たのだ。
「すみません。」
と謝りながら男を振り返ると、満更でもない表情が浮かんでいた。

町代の大学は女子大だった。でも、彼氏はいた。彼は薬剤師で二十八才。紺の外車で、町代をデートに誘い出した。当然の如く、ラブホテルに入る。でも、町代は、
「わたし、コンドームなんて嫌いなの。生でして。」
と背の高い彼にせがんだ。
「だって君、卒業は二年後じゃないか。それまでに子供ができたら、困るだろう。」
「困らないわ。わたしが育てる。」
町代は、軽装の服を素早く脱ぐと白の下着だけになった。大きな尻と連動しているのか、恥丘のところはプクリと膨れ上がっているのがパンティの上からでも見て取れる。
薬剤師の男との距離は一メートル、彼は彼女のパンティから匂う若い女性の果樹のような匂いを嗅いでいた。
それだけで、チンコを立ててしまったら、町代はそこに視線を向けると、
「あら、神藤さんの股間がふくらんだわ。立ったの?」
と薬剤師の股間を、穴の開くほど見つめている。
「ああ、立ってるよ。」
町代は両手を薬剤師の神藤に差し出すと、
「だったら、抱いて嵌めてよ。」
と要望した。
「うん、嵌められないけど抱くよ。」
神藤は下着だけの町代を抱っこして、ダブルベッドの中央に降ろした。呉服屋の娘らしく、いい下着をつけている。神藤は、町代の膨れて突出したパンティの膨らみに舌を這わせた。
「はああっ、いい。」
町代は伸び上がるようにして、悶える。神藤が続けて町代のパンティの割れ目に沿って舌を動かしていると、彼の唾液とは別に彼女の愛液が滲み出てきた。
神藤は自分の液体を放出させたくて、たまらなくなった。だが、妊娠はさけなければならない。彼女がよくても、自分には駄目だ。そこで、町代の体を百八十度回転させてうつ伏せにした。その頃でも彼女の尻は、大きく幅も広い。パンティを履いてはいるが、尻の割れ目は写っている。その先は、アナル、菊門だ。
神藤は破裂しそうに硬直したモノを、町代のパンティの上から尻の割れ目に突っ込んだ。びくんと震えた彼女は、
「ああ、そこはお尻の方よ。もっと下。」
と声を上げたが、神藤は構わず町代の尻の割れ目の浅いところでビッグになったものを擦りつけていた。
一分ほどで、神藤は放出した。ドック、ドックと町代のパンティの尻の割れ目の部分に飛び散った。
町代は巨大尻を震わせて、
「もう。そんなとこに出して・・・。」
と薄い眉毛をしかめている。神藤は、
「ごめんね。濡れてしまったパンティは、ぼくにくれないか。実はね、ぼくは女性の愛液を研究しているんだよ。
バイアグラとか、シアリスとかアメリカで作られているものとは根本から違った発想で、作りたい。
それで、一体、男の性器を勃起させるものとは、という事を考えてみると今までの医学の説とかは間違っていると思うんだ。
医学の説からする、男性はとにかく精子を製造していって、それが溜まると外へ放出したくなるというアレは、どうも違うと思うんだね。
やはりね、女性というものがあっての勃起だろ?仮に八十のばあさんが近くにいるからといって、勃起するかというと、それはしないんだ。つまり、今の医学の説明ではハッキリ言って、男性の射精原理を物理的にのみ説明していると思う。
ぼくも、今、射精したけど、町代だから射精してしまったんで、四十のおばさんとかなら、尻に突っ込んでも射精しないと思う。
というのもね、この前、風俗に行ったんだけど、ファッションヘルスの。そこで若い女にしゃぶってもらったんだけど、射精できなかったんだ。」
町代は、うつ伏せから起き直ってベッドに腰掛けて神藤の話を聞いていたが、
「えっ。そんなものなの。でも、わたしという人がいるのに風俗に行くなんて。」
「それは悪いと思うけど、実験的に行ったのだよ。結果は、そこでは射精せずに、今、出してしまった。」
「嬉しい。って、なんか変な気もするけど。わたしのパンティ、あげます。ここを出てから家までノーパンで、帰るのかしら。」
「玄関前まで、車で送るよ。心配するな。」
神藤は町代から、自分の精液がついたパンティを受け取った。そ
れを鼻に近づけて、匂いを嗅ぐと、
「やはり、君の分泌した愛液が影響したようだね。ただ、そんなに単純な問題じゃないと思うんだ。つまり、君の愛液が与える影響はぼくにのみ有効なのかもしれない、ということだね。
これが人間の神秘なる不可思議な領域なのだ、といえるのではないだろうか、とね。」
「うん、よくわからないけど。神藤寛吉(しんどう・かんきち)という男性だけを、今のわたしは好きなのかしら。」
神藤は町代を、しげしげと見ると、細い目からはよく彼女の感情は、読み取れなかった。
「それは、そうあって欲しいね。ともかく、この愛液を研究してバイアグラ以上のものが作り出せれば、ぼくは億万長者になれるよ。
最近の日本では、精力剤を買う人も増えているから。
バイアグラは、副作用も言われているし。医師の診断も必要だとか、危険な面もあるらしいからね。
要するにさ、服用しなければいけないんだよ。ぼくが考えるのは、スプレータイプでね、君の愛液みたいなものを振り掛けるというやり方が、今までと違って革新的だと思うんだ。」
町代は何だか、面倒くさくなってきた。それに寛吉は自分の尻の方に出してしまったのだ、それは彼女には不満が残る。
薄い陰毛を露わにしてベッドに腰掛けている町代は、
「好きにしてよ。もう服を着てもいい?ブラだけじゃ寒い気もする。」
神藤は慌てると、
「あ、ああ。もちろん。そのままでいて欲しいとは、言わなかったけど。」
町代は、服をつけ始めた。

学生時代の回想を止めると、町代は今の状況に戻った。五十代の男は、
「いい部屋だね。ここに決めてもいいけど、なんかサービスないの?」
「不動産の仲介の会社としましては、付加サービスはいたしておりませんが。」
「じゃあ、他に頼めばいいわけだ。」
町代は、焦った。
「あ、あの。先ほどは失礼しました。」
と頭を下げる。
「なに、君のお尻は気持ちよかったよ。」
五十の男は、ははは、と笑った。町代はくるりと男に背を向けると、巨大な尻を意図的に男の股間に当てた。二人は、十畳の部屋の真ん中に立っている。町代の柔らかく弾力性のある尻が再び、五十男のちいさな棒を刺激した。
「あ、久し振りの感覚だ。」
と男は言うと、町代の尻に自分の分身を小人から大人へと変身させた。
町代の尻は、ゴムの硬い棒が大きくなっていくような感触を味わった。そのまま尻を当て続けると、五十男は大きく硬くなったモノを擦りつけ始めた。二十秒後、男は、
「あああ。出る。」
と叫ぶと、少し前向きにがっくりとした。自分のパンツの中に射精したらしい。少し決まりの悪そうな顔をして、
「いや、女房とも五年程してなかった。少しの間だけど、気持ちよくしてくれたね。他社にないサービスだよ。この部屋に決めるけど、君にも小遣いを上げよう。」
男は、財布から福沢諭吉の顔を五枚、抜き取って町代に渡した。彼女はそれを受け取ると、
「五万円も。いいのですか?」
「ああ。会社には報告せずに、君の財布に入れてくれよ。」
これで、その高級物件は契約が成立した。

古妻新江は秋谷町代が大きな契約を取ったので、人事でないように喜んだ。
昼休みに休憩室で二人だけになった時、新江は、
「大きな物件だったわね。あんな家賃のところ、どうやって決めたの?町代。」
と興味深深として聞いた。
「そんなに面倒な事は、なかったわ。」
畳の上に座っている二人だが、その間に座卓がある。新江は町代の表情を見て、
「もしかして、性的なことをしたんじゃない?そのお客さんに。」
「いや、そんなことないわ。」
と否定する町代だが、頬が赤くなった。新江はそれを見て、
「わたしたちの仲じゃない。本当の事を言いなさいよ。」
黙っている町代の背後に新江は移動して、座った。彼女の肩に両手を置くと新江は、
「こんな風にされたんじゃないの。それから・・・。」
新江は町代の背中から、右手を伸ばして彼女の右の乳房を掴んだ。町代は、かすかに身をのけ反らせると、
「そんな事してないわ・・。」
と答える。
新江の右手の人差し指は、町代の乳首に触れてしまった。町代はその瞬間、
「あん、いやん。」
と艶かしく動く。新江は女性の悶える様を身近に眼にするのは、初めてだったのだ。新江は左手も伸ばして、町代の左の乳房も掴んだ。
町代は身をくねらすと、
「あん。お客さんと、そんな事・・・。」
新江は、でもそれは嘘だと感じていた。だから、
「こういうのは、してないけど、どういうのをしたの?」
と問いかけながら、ゴムマリみたいな彼女の乳房を揉みまくる。
「あっ、ああっ。新江、感じちゃうわ。本当はしたのよ。わたしのお尻で。」
「そうなのね。」
新江は自分のマンコが、町代の尻に当たるようにした。自分の女性器としての新感覚だった。女性の豊かな尻に、自分の割れ目を当ててみるのは。世の中の大半、いえ、百パーセント近くの女性は毎日、スーパーに行って、だんなとお義理でセックスしているだけなのよ。
同僚の豊満な白い大きな弾力のある尻に、自分の割れ目を当てるのが、こんなに気持ちいいものだなんて知らなかったわ。
新江はもっと、町代の体を知りたくなった。知的にではなく、感覚的に。それに、町代は自分の愛撫で、こんなに感じてくれるなんて思ってもいなかったから。

ぐいぐいと自分のオマンコの割れ目を、町代の大きな形のいい尻肉に擦り付けた。両手は同時に、町代の両の乳房を揉み続けて。町代は、
「はああっ。新江のマンコ、当たってる。ああっ、おっぱいが、とろけそう。」
と喘ぎながら発音した。新江は休憩室の壁に掛かった、おしゃれな時計を見た。十二時四十五分、あと五分は町代の体を楽しめる。休憩室の鍵はかけているし、まあ、他の男子社員は来る事はない。殺風景な休憩室だが、二人の若い女性の熱気でムンムン、そしてムンとしてきた。
新江は右手を町代の乳房から急降下させた。パンティの上から町代の割れ目を指で確かめる。
町代は、
「そこにも触るの?もう、そこ・・・。」
町代が呻くように話すと、新江の指は濡れたパンティを感じた。新江は心置きなく、町代の割れ目を指でなぞっていた。
大きな尻の女性に後ろから絡み付いている、男性的な女性が蠢く様は、何か天女が二人戯れているようにも見えた。
そう、見えたのだ。「マンアパ・ナンバーワン」の薬院本店の休憩室の前をお局的女性、総務、事務の今年三十九になる独身女性が愛用の黒縁の眼鏡を光らせながら、通り過ぎようとすると中から、
「あはん。」
という色っぽい声が聞こえた。お局女性は、綺羅綺羅子(きら・きらこ)という名前だが、
(男子社員が、エッチなビデオでも見ているのかしら。)と考えて、ドアノブを回したが、開かない。鍵穴から見えるのは、なんと、こっちを向いた秋谷町代に馬乗りになっている古妻新江の顔、の二つの顔と姿態だった。
(レズってるのね。外は暑いのに。休憩室は、エアコンつけてるようね。会社のお金でレズできて、いいわね。)
背の高いお局、綺羅綺羅子は、独り身の左腕の肌を擦った。彼女は、貧乳にして貧尻だ。それも災いしてか、今までの男性の経験人数は二人となっている。十九歳から三十九歳までの間に二人なので、十年に一人という割りだ。実際は、そんなに十年ごとに一人という訳でもないのが一般的だろう。綺羅子も正確には、十二年付き合って別れた男と、八年で別れた男がいた。
綺羅子の身長は、百七十センチもある。中学、高校とバレーボール部だったので、背が急に伸びた。
男のいない期間が伸びてきている今、綺羅子にとっても小さな鍵穴から見えるレズの光景は深刻な影響を彼女に与えてしまった。
綺羅子はタイトな紺色のロングスカートの中に、長いカッターシャツの右手を伸ばすと、自分のマンコに触れていた。
(あ、濡れてる・・)
綺羅子は自分の反応に、びっくりしたが腕時計を見て、鍵穴を覗きなおすと、右手でパンティの上からオナニーを始めた。
綺羅子は時計を気にしながら、オナニーしていたので、
(あ、時間だ。もう、事務室に行こう。)
と思うと、その場から急ぎ足で、立ち去る。三十秒後に、新江と町代が慌てて出てきた。

事務室に入ってきた新江と町代を、チラと横目で見た綺羅綺羅子は二人のうちのどちらかと親しくなりたいと思った。そして、レズするのだ。草食系男子とやらには、用はない。自分は男に恵まれなかったが、女には恵まれているのかもしれない。
自分が最初に付き合ったのは、美少女の好きな家に引きこもりがちな二十六歳のフリーターの男だった。背は低く、肥っていて腹も少し出ていた。
綺羅子は眼鏡を外すと、意外にも美少女なのだ。随分昔の事なので、出会い系もなかったが、伝言ダイヤルのようなもので二人は知り合った。
その男、由田金二郎(ゆだ・きんじろう)は、美少女が好きだけど十八歳未満なら条例違反になるので、十九歳以上の女子希望
などと伝言していた。
綺羅子は、毎朝鏡を見て出勤していた。その際に、鏡を見ては自分の顔を美少女だと思うし、通勤の地下鉄の車内にも自分よりいい顔の女性は見当たらなかった。ただ、スタイルにおいては綺羅子は胸も尻も出ていないので、そういうところを見ると電車内にはもっと体のいい女性が多くいた。
地下鉄が満員になると、綺羅子の隣の二十代前半のOL、顔は目立ったところはないが胸と尻の大きな女性が痴漢されているのを見た。痴漢しているのは、三十代のサラリーマン風の男で世間で言うイケメンだ。背もその女性よりも、頭一つ高い。
男の右手は、女性の胸からスカートの中に入っていった。そのOLも触られて気持ちよさそうにしていたので、痴漢といえるかどうかわからない。福岡市では、こういう事が、しょっちゅうあっても女性が痴漢と訴えない事が多いので痴漢の実数は明らかではない。
その男は最後の方ではOLのマンコをパンティの上から愛撫していたが、天神に着いたので乗客のすべては降りた。
綺羅子は降りていく痴漢男の右手の指を見たけど、その指は濡れて光っていた。
綺羅子は、そのOLのように痴漢された事は一度もなかった。触り甲斐が、ないからだろう。
由田金二郎と中央区役所の前で、土曜日に待ち合わせをして綺羅子は会った。眼鏡をかけた綺羅子に、
「眼鏡を外せば、美少女みたいだね。」
と由田は話す。
「人が多いところでは、外さないの。人のいないところに行こう。」
と、果敢にも綺羅子は発言した。由田は眼をグリグリさせると、
「この近くに個室喫茶がある。そこへ行こう。」
「うん。いいよ。」

その個室喫茶はビルの一室で、前には国道が走っている。福岡市中央区役所も国道沿いにある。背の高い綺羅子と背の低い金二郎は、夏の日の午後の日差しを浴びながら個室喫茶に入った。
ひんやりと涼しい冷房が、二人を包んだ。注文を聞いてウェイターが持ってきた後には、ドアに中から鍵を掛けておけばいい。
鍵を掛けて金二郎は、綺羅子を見ると、
「胸もお尻もないのも美少女だねー。」
「あら、もう十九歳なの、わたし。」
「なら。もうここで好きな事ができるわけだ。」
金二郎は綺羅子の席の隣に来た。赤いソファが横長にある、その片隅に綺羅子は腰掛けていた。金二郎の他にもう一人、座れそうだ。
金二郎は、綺羅子の胸を服の上から触った。あるかないかの乳房の盛り上がりだ。彼女は何も感じないらしい。
背伸びするようにして、金二郎は綺羅子にキスした。それからマンコの上の恥毛を触ったが、そこも女性らしい膨らみはない。
綺羅子にとっては初のキスだったが、感じるものはなかった。
金二郎は一人、うなずくと、
「おれ、妹がいるんだ。千冬(ちふゆ)っていうんだけど、君と同じ歳だろう。不動産会社で働いているけど、今日は珍しく休みだったなあ。それで彼氏もいないから、兄のおれと遊びたいらしいからね。
電話して呼んでみるよ。」
金二郎は携帯電話、その頃なのでスマートフォンではない、で妹に電話した。
「あ、千冬か。兄さんだよ。今、中央区役所近くの個室喫茶にいるんだ。遊びにこないか?・・・来るならどの位で・・・・十分か、早いな。待ってるぞ。」
金二郎は、
「妹は、この近くに住んでいるんだ。不動産会社が、この近くだからね。」
「あら、わたしも不動産会社で働いているのよ。」
「ほう、それは奇遇っていうんだろう。妹は、もっとやーる賃貸っていう会社だけど。」
「あ、それなら競合他社ね。うちは、マンアパ・ナンバーワン。」
「ああ、あの千百店舗も全国にあるやつ、か。」
「そう、由田さんも部屋を借りる時は、お願いします。」
由田は綺羅子の隣で、鼻を曲げて笑うと、
「いいよ。でも、おれ、実家に住んでるんだ。南区の山の近くに。」
「通勤が、大変じゃありませんか。」
「そうだなー。今のアルバイトは近くのスーパーで働いているから。」
「今のところ、問題なしなのですね。」
「うん、今のところはね。あ、妹が来るから注文しておこう。あいつの好きなウインナーコーヒーを。」
金二郎は部屋に備え付けの電話で、店に電話して、
「ウインナーコーヒー一つ、持って来て。」
と頼んでいた。

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