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sf小説・体験版・未来の出来事7

 湖畔はヤシの木が並んでいる。黄金の湖面は波がない。太陽は何と空に二つ並んでいる。横並びの太陽だ。空を見上げた流太郎は鮫肌輝美子に、
「この星には太陽が二つ、あるんですね。」
「ええ、一つの太陽の光が弱くなると、もう一つの太陽の光が強くなる。それで地球みたいに四季は、ないのよ。つまり冬は、ないのね。」
「夏も、それほど暑くない訳ですか、この星は。」
「そうね、よく分かるわね、それが。」
「なんとなく、ですが、ハハハ。」
その黄金の湖は日本の琵琶湖より広いらしい。キアー、キアーと鳥の鳴き声が空から聴こえた。流太郎が見上げると、そこには金色のカラスが空を飛んでいた。二つの赤い太陽のもと、飛翔するカラスは椰子の木陰に姿を隠した。
 やがて二人はレストランのような建物の横に、ヨットのようなものが何艘か停泊している前に辿り着く。
ヨットに乗るための料金所みたいな場所は、自動券売機みたいなものが立っている。鮫肌輝美子はスマートフォンのようなものをミニスカートのポケットから取り出して券売機に、かざす。二人分のチケットを買ったようだ。券売機の横に警備員らしき男性が立っていた。流太郎が、その警備員をよく見ると彼はロボットらしい。波止場に似た湖畔のヨットに輝美子と乗り込む流太郎。輝美子がヨットを湖に出す。黄金の湖面の色は流太郎に異世界に来ている事を強く感じさせた。二人は並んで座っている。流太郎は口を開かずには、いられない。
「この湖からでも純金は取り出せるんでしょう、すごく多くを。」
輝美子の瞳には金色の湖面が映っている。彼女は答える。
「ええ、でも我が国の金は地球の砂みたいなものよ。地球の何処でも、こんなに恵まれている場所は、ないわ。わたし達から見れば、地球は貧しい国。南出裳部長の上の人は日本で株取引をしているけど、それは景気の流動性のない国で景気をよくするために取引をしているんだそうよ。」
「そうですか、この星では株取引は、ありますか。」
「もちろん、あるわよ。我々もUFOで地球に行くけれど、移動中に株取引をする場合もある。UFOの中の宇宙人って何をしているか、地球の人は考えないでしょう。じっとしていても、つまらないしね。地球の日本でも新幹線に乗って、あるいはリニアモーターカーに乗車中にスマートフォンで株取引は、できる。それと同じですよ、UFO内での株取引は。」
輝美子はヨットの船べりに両手をつくと、空を見上げるようにした。
湖ではヨットは他には見えない。それについて流太郎は、
「今日は、この星も日曜日なんでしょう。この辺は人もあんまり、来ないんですか。」
と質問する。ヨットの揺らぎが、彼には心地よかった。
「この辺は日本で言う田舎なのよ。もう少し暑く成れば人も来るわ。少し富裕な人達は他の惑星へ旅行しに行きます。地球にあるパスポートは、この星にはない。この星の国に軍隊はなくて、他の惑星からの攻撃を想定した軍備が、あるだけよ。だから国は、いくつかあるけど、この星にはパスポートは要らないし、他の惑星に行く際もパスポートは不要よ。いいでしょ、こういう国、星って。」
二つの太陽は均衡した輝きを見せていた。流太郎は夢のような国だ、と思い、
「地球も、いつか、そうあるべきだとは理想論として言われてきましたよ。でも、現実は・・・国の状態は二十世紀と同じですからね。救世主なんて結局、現れなかったし。」
輝美子は投げやりな微笑みを見せると、
「この星では地球は野蛮な星だという事に、なっているのよ。地球を指導している宇宙人なんて、いないわ。地球は観光に適しているとは思われていない。太陽は一つしかないし。むしろビジネス目的なら行ける。わたしも南出裳部長から沢山の報酬を出すから、と言われて地球に行ったわけ。宇宙なんて、とても広すぎるから地球人は、ほんの砂粒みたいな部分しか知らない。太陽が三つあって、夜のない星もあるわ。観光に適した星は、そこね。その星は人類は、何故か存在していなかった。核戦争で絶滅したのかしら。トウモロコシ畑みたいな所のそばにバナナが実っている。高い山に登れば林檎の木があるという素敵な星よ。」
流太郎は眼をギラッとさせ、
「食べ物には困らないんですね、鮫肌さん。」
と合の手を打つ。
「食べ物は、この星でも困る事はないわ。このヨットは水の中にも潜(もぐ)れる。」
鮫肌輝美子はヨットの側面にあるボタンを押した。するとヨットの両側から鉄の壁が突き出して、それは先端が斜めになり両方が接合した。つまり、その鉄の板はヨットの屋根になったのだ。
流太郎は驚いて、その鉄の壁を見ると潜水艦にあるような丸い小さな窓が両側の壁にあり、まだヨットは湖の中に潜っていないようだ。
 輝美子は別のボタンを押す。するとヨットは湖中に潜行し始めた。
丸い窓に見えていた湖上の風景は湖水に変わり、ずんずんと湖底に潜水艦へと変貌したヨットは降りて行っているらしい。
 流太郎は熱心にガラス窓を見ている。それは地球にあるガラスとは違う物質で出来ていて、地球のガラスより硬い。それはガラスにして鋼鉄のように硬いものなのだが、流太郎には透明度の高いガラスに見えた。そこに映ったのは湖中を泳ぐ大きなフグ、さらに深くなると巨大なサメのような生物。それも通り越すと潜水艦ヨットは湖底に着床したらしい、振動もなしに。輝美子は、さらに別のボタンを押すと次にヨットは自動車のように湖底を走り出した。ヨットにして潜水艦、次は自動車に変わる。なんという多性能な乗り物だろう。こんなものが、さりげなく湖に繋いであったなんて。
さぞや高価なレンタル料と思い、流太郎は訊いてみる。
「鮫肌さん、すごい乗り物ですね。随分、高いんでしょう、これ。」
「いいえ、そんなに高い物じゃないわ。地球の日本の煙草、ひと箱位かな。それで一日、乗り回せるわ。」
「そうそう、動力を聞いていなかったな。この乗り物の動力は何ですか。」
「最初は風で、次は調整重力よ。」
「調整重力。って何でしょう、それは。」
「この星にも重力がある。それを多方向に変えられるし、重力の強さも変えられる。はるかな太古に、この星で重力調整機が発明された時は、それはとても高価なものだった。でも生産が進めば価格は下落するもの、今では湖上のレンタルヨットにも使われているのね。」
「はあ、地球でも電化製品は似たような価格の変動ですね。」
「星の重力は下へ引っ張るけど、それを逆にしたり横にしたり出来るから、その力で、この乗り物は動く。UFOタイプは星間重力を応用しているものも、あるわ。」
「セイカン重力?精悍な男性とかの・・・。」
「星と星との重力ね。月と地球は引っ張り合うし、太陽は太陽系の惑星を引っ張っている。でも月や地球も太陽を引っ張るから、拮抗した力が惑星と恒星の距離を生み出して二つは衝突しない太陽系となっている重力を応用するのが、この星の一つの科学。地球人類には想像もできないものね。」
流太郎は沈黙してしまった。湖底を走っていたのが停車したらしい。流太郎は見た。ガラス窓に映っているのは金色の五重塔みたいな建物だ。湖水は金色とはいえ、薄い金色で湖中の中も見えるのである。だからフグもサメも、さっき流太郎は目撃した。
でも五重塔が湖の中に、あるなんて。しかも金色の五重塔だ。その五重の塔の一階の部分が左右に開いた。だが、その中に湖水は流入しない。流太郎が乗ったヨット型多性能乗り物は、その五重の塔の一階に入っていった。
 そこに入ると壁が閉まる。湖水は一滴も入り込まなかった。そこは地下駐車場みたいな場所で、常駐の男性の中年男の警備員がいた。
輝美子はボタンを押して鉄の屋根をヨットの両側に降ろす。
二人の姿を見た警備男性は、
「やあ、いらっしゃい。鮫肌さんでしょう?」
と日本語で聞いた。輝美子は、
「ええ、湖底日本人労働施設って、こちらですか。」
「はいはい、そうですよ。私も、ここで働くには地球の日本語を話せる方がいいと思って勉強しました。施設長から今日、鮫肌さんと日本人が来ると聞きましたから、二人が来たら中へ通すように言われています、施設長からね。さあ、入り口を開けますから。」
と話す、鼻の下に髭を生やした警備員だ。
鮫肌輝美子はヨットの座席を立ち上がると、
「さあ、時君、行くわよ。」
と声をかける。
日本人労働施設に入る?のだろうか、自分が?というより自分も?なのだろうか?
「行かないと、いけないんですか?あそこに。」
「入ってみないとね、貴方も日本人だし。さあ、さあ、お代は要らないから。」
流太郎は動かずに居座っても、いずれは連れて行かれると考え、それなら仕方ないと立ち上がった。
 五重の塔の内部ではあるが、そこは古風なものではなく白い壁の、白い廊下に白いドアが、廊下の両側に並んでいた。ドアが地球のものと違うのはドアノブがない、というところか。どうやって開けるんだ?と流太郎は思ったが、その一つのドアは横に開いた。警備員が手にしたリモコンのようなものでドアを開けたらしい。
そのドアの内部の部屋は大きな図書館ほども広く、本棚みたいなものも並んでいた。図書館にあるような広い机があり、そこに十人ほどの日本人が椅子に座って大きなパソコンに向かっていた。
流太郎は(労働施設って図書館の中でパソコンで仕事をする事か)と、思う。見たところ労働という雰囲気でもない。図書館で司書が座るようなところにいた若い男性の人物が立ち上がると、鮫肌輝美子と流太郎と警備員に近づいてきて、
「ようこそ。施設長から聞いています。鮫肌さんと日本人が来る事は。」
と気軽に話した。流太郎は自分も労働させられるのか、と思い、
「どんな仕事をしているんでしょう?彼らは。」
と尋ねてみた。
若い男性はニッと笑い、
「マイニング(採掘)ですよ。」
と説明する。彼らのしている仕事はマイニングなのか。
「マイニングって仮想通貨のマイニングのような事ですか。」
「そうです。この星の仮想通貨のね。人手が足りないから地球から来てもらったんです。日本人で仕事にあぶれている人は多いから、喜んで来てくれましたよ。UFOから現れて、ハローワークに並んでいる人に声をかける。その時、UFOは人間の肉眼では見えない、それと監視カメラにも写らないように、ある光線で保護膜を掛けておきます。人間の目に見えなくても監視カメラに写っていた、となると後で大問題でしょう。ハローワークにUFOあらわる、なんてね。それは一大センセーションです。そうならないように、していますからマスメディアなどは、もちろん、誰も我々に気づく事はない。それから話しかけて手ごたえのある人には喫茶店に誘って、話をしてみる。
「お仕事を探していますか?いい仕事が、ありますよ。」
とね。そしたら、
「本当ですか。ハローワークでも中々、いい仕事が見つからなくって困っています。」
と中年の男性などは、言いますね。
「四十代、課長クラスの首切りが人件費の軽減には、とてもいいから会社は躊躇うことなく実行するんですよ。もしかして、貴方も、そうですか?」
そうしたら、その男性、首を前に曲げて、
「ええ、上場企業で働いていましたけど、首を切られました。会社で何十年も働いた末に、それです。ハローワークで仕事を見つけていますが、私の前職の会社が、それなりのもので給与面でも、それに該当するものが中々、ないというのもありますね。」
「なるほどね。四十で転職も難しいのは日本では当たり前ですね。ヘッドハンティングは、もう少し年齢が上の人達を狙うものです。四十代が一番、転職しにくいものかもしれませんね。」
「そうですかね、やっぱり。コンピューターエンジニアだったんですが、大昔に比べると人材も多くて、若い人ほど最近の技術に詳しく、ともすると私のような年配は負けてしまいます。それで課長のような仕事をしていたんですが、特に要らないからと肩叩き、で依願退職させられました。退職金は貰ったんですが。毎日、することもなく自分で企業を立ち上げる力もなく、週に三度はハローワークで職探し。しますが、大手企業はね、ハローワークに求人を出さなくてもいいわけですから。で、ネットで職探しも叶いません。
第一、大卒者の仕事がない時代に又、なっているでしょう。」
「ええ、そうみたいですね。」
「何処の企業も人手不足はないです。ベビーブームなんて日本には再び、なかった。だから、そういう世代が辞めて会社は人手不足になる、という、ずっと大昔のような、そう、あれは平成とかいう頃でしたかね、そんなのもなかったでしょう?今までの日本では。」
「ああ、そうですね。人口も減り続けてますよね。又。」
そう答えた私の顔を見て、彼は、
「あなた日本人では、ないんでしょう?やはりヨーロッパの人、ですか。」
と聞いてきたので、
「ええ、北欧ですよ。」
と答えておくと、
「へえー、そうですか。そしたら、あ、そうだ。北欧に仕事があるんですね、だから声を掛けてくれたんだ。」
と嬉しそうです。
「そう、そんなものに近いですかね、ええ、ええ。」
彼は両手を胸の前で組んで、
「お願いします。コンピューター関連なら、一通り出来ますから。」
と私に頼み込む。
「おお、それは、こちらも希望していたところですよ。ご家族は、いらっしゃいますか、貴方。」
「いや、それが独身です。女房はいたんですが、私の給与が彼女の思うように上がらないせいか、イケメンのホストと同棲しているらしいですよ。取り戻すつもりは、ないし。」
「お子さんは、いらっしゃいますか?」
「いえ、ちょっと女房が不妊症らしくてね、ええ。」
「それでは気軽なものじゃないですか。」
「でも北欧でしょう、あなたの会社。」
「ん、まあね、遠いですけど、すぐ行けますよ。心配ないです。」
「パスポートとか作らないと、いけません。それは、県庁に行けば、いいから。暇だから、いいけど、北欧の言葉は何も知りませんよ、私。」
「語学は心配いりませんよ。日本語の分かる人達の部署が、あります。それに、そこは他にも日本から来た人達が働いていますから。」
彼の目は暁の星のように輝きました。
「それは、いいなー。すぐにでも、行きますよ。お国は、どちらですか?」
「行けば分かります。すぐに乗り物を用意しますから。」
と喫茶店を出て、会計は私持ちで。
近くにある広い公園。平日の午前なんて誰も、いません。私は空に向かって指を鳴らす。即座にUFOが私達の目の前に着陸。四十代の元、課長の男性は、
「な、な、なんと空飛ぶ円盤では、ありませんか。あなたは、もしかして、宇宙人?」
と幾分、顔が青ざめています。
「そう、その通りです。でも、ご心配なく。大昔のSFみたいに侵略目的で来ているのでは、ありませんから。」
「そ、そうみたいに見えます、が・・・・。」
「どのみち日本にいたって仕事は、ありませんよ。いい思いの出来るのは一部の日本人だけです。又、そういう社会になっているんです。こんな国に未練が、ありますか。」
と諄々と私は説きました。
「そう言われれば、その通りです。いや、ありがとう。あなたは日本語が巧い。それで声だけ聞いていれば日本人と思ってしまう程です。国際社会というより宇宙社会の時代かもしれませんね。私は運が、いいのかもしれない。行きますよ、貴方の星へ。」
という事で、彼にも宇宙船に乗ってもらえました。」
と、その若い男性は揉み手をして話した。
流太郎は、
「マイニングって地球では電気代が、とても、かかるという事らしいですが。」
と質問すると、その若いレプティリアンは、
「この星ではフリーエネルギーです。電力は無料なんです。」
と即答しました。
流太郎は次に、
「それでは電力会社の給料は、どうやって調達しますか。」
と尋ねると、
「それは、もう、税金ですよ。ですから電力税は、ありますね。」
「電力を使った分の税金、ですね?」
「ええ、そうです。おっしゃる通り。」
「それでは、やはり電気代、ならぬ電力税を多く払うという事になりませんか。」
「それは、その、国家的プロジェクトですから。我々の給料も税金ですから。」
「ああ、なるほど。それなら分かります。」
「仮想通貨のマイニングは我が国の国家予算で支払われます。いずれ、地球の仮想通貨と連動させなければ、ならないと思います。」
壮大な計画だ、と流太郎は思った。
やはり、まずはビットコインとの連動か。でも、他の惑星、それも何万光年も離れた星と仮想通貨を連動させる、には?流太郎は、
「どうやって、連動させますか?」
と聞いてみた。
「あ、それは簡単です。取引所を開設して新規コインを発行する。大昔、月の土地を売買している会社がありましたが、あんな風にするのもいいでしょう。もっとも、月には先住者がいるから本当には月の土地は勝手に売買は、できませんけど。真実を知る国は月から撤退しているでしょう。中国の探査船は、しばらく泳がせておくらしいですが。」
日本が月面に宇宙探査船を着陸させなかったのは経済的にも、よかったのだろう。流太郎は、
「仮想通貨で地球でも大儲けですね。」
と言ってみる。
「ええ、そうですよ。ここでマイニングの仕事に従事しませんか?」
と流太郎は誘われた。
「労働時間は、どの位でしょうか。」
「一日、六時間ほどです。」
なんと短い。それでは労働とは、いえない。地球の感覚としては。
「そんなに短くて、いいんですか。」
と流太郎は訊き返す。
「わが国の平均労働時間は三時間ほどですよ。週休三日制ですね、それに祝日もあります。」
「そんなに休みが、あるんですか、へえー、。」
「ゴールデンウイークは希望する人には二十日休めますよ。」
「二十日も。そんなに休んで、収入の方は大丈夫なんですか。」
「もちろん。そうでなければ休めませんよ。ね、鮫肌さん。」
管理者らしい若い男は輝美子を見て云う。
「ええ、そうです。わたしも今度、十日休む予定ですから。」
それに対して管理者曰(いわ)く、
「鮫肌さん、働きすぎですよ。彼氏と別れたの、いつでしたか。」
「三十年位前かな、ふふふ。」
管理者は流太郎を一瞥すると、
「地球人と、付き合うのもいいかもしれませんね。その人も、でも仕事がないんでしょう?鮫肌さん。だから、ここへ連れて来た。」
と身を乗り出す。
流太郎は慌てて、
「ぼく、仕事はあります。今日は日曜日だから、休みでした。鮫肌さんも、この星が今日は日曜日だと言いましたけど。」
と遮るように口を出す。鮫肌輝美子は落ち着いて、
「この人にはマイニングを見学してもらいたかったのよ。働いてもらう気は、わたしには無いけど。」
と解説した。
若い管理者は両肩を落とすと、
「それは申し訳ありませんでした。ここのマイニングは労働者の自由意思で休日も働きたい人は、働いてもらっています。その分、貰える報酬が増えるからです。現金の他に仮想通貨も支給しますから、株のストックオプション制度に似ていますね。」
と、それでも、まだ流太郎にマイニングしてもらいたさそうだった。輝美子は流太郎の視線を追うと、彼はもうマイニングの作業を見ていなかった。それなので、
「そろそろ、ここを出ましょうか?時さん?」
「は、ええ、出たいですね。」
「それじゃ、若き管理者さん、さようなら。」
「お疲れさまでした、お気をつけて。又、よかったら、この日本人労働施設に、お越しください。」
残念そうな、その管理者の視線を振り払うように流太郎は身を翻して輝美子に続いた。
 潜水艦ヨットに戻った二人は、さっきの警備員に門を開けてもらう。扉というより、その階の壁の全てが開いても湖水は流入してこない。輝美子は右足を押してエンジン、それは重力調整装置だが、を発進させた。潜水艦ヨットは湖水に潜った時、すでにヨットの帆は鉄の屋根の中に降ろされている。流線型の船体を再び、黄金色の湖水の中に辷(すべ)らせていく。
 それにしても、と流太郎は思う。今日は地球では日曜の午後だった。だが、もう、だいぶ時間が経過したから日没へ向かっている筈だが、湖水の中とは言え明るすぎる。時差?なのか。それを聞いてみよう。
「鮫肌さん、今、午後なんでしょう、この星で。」
「いいえ、まだ午前中よ。もうすぐランチタイム。貴方は何を食べる?」
「ぼくとしては夕食になります。何があるか知りませんから、何を食べられるんですか。」
「あら、ごめんなさい。そうだったわね。地球人のあなたが知る由もないわよね、この星の食べ物を。あ、そうそう。お腹がまだ減っていないのなら、このキャンディーをあげるわ。」
潜水艦ヨットの中央にあるテーブルのようなものの中から、輝美子は丸い包みの小さなキャンディーを流太郎に差し出す。それを受け取り、流太郎は両手でキャンディーの包装を開けると、メロンの色をした丸いキャンディーだった。
口に入れると流太郎は、地球のメロンより更に甘い味覚を味わった。
 輝美子は大きな丼のようなものを手にしている。丼の中は空だ。彼女はヨットのパネルの一つのボタンを押すと、
「xqw88::::」
とでも聞こえる、その星の言語で何か話した。何かを注文しているようだ。その話しを終えると輝美子は流太郎に、
「今、食事の注文をしたのよ。」
と話す。
彼女が持つ銀色の丼の中にクリームシチューのようなものが底から湧いてきた。丼の上部に細長いフランスパンが二つ、並んだ。輝美子は流太郎にフランスパンの一つを手渡し、
「食べてみてよ、おいしいよ、これ。」
と勧める。流太郎は、
「ありがとう。いただきます。」と礼を言うと、それを口の中に頬張ると、そのパンの中に細長く切られたメロンが果実として入っていた。(これが本当のメロンパンだな)と流太郎は、舌先の心地よい食感を堪能した。輝美子はフランスパンを食べ終わって、ドンブリの容器を手に持つと右手で丼の側面にあるボタンを押す。すると丼の中のクリームシチューのようなものが噴水のように沸き上がり、彼女は、それを口の中に入れてしまった。
不思議な事に丼の底まで、綺麗にクリームシチューらしきものが無くなっていた。輝美子は、
「それでは、と。上昇するわ。」と宣言する。潜水艦ヨットは湖面に向かって急上昇した。黄金の水の上に現れたヨットは潜水艦の鉄の壁を降ろし、その代りにヨットの帆を広げた。爽やかな、そよかぜが二人の頬を心地よく撫でる。
輝美子は計器盤のようなものを見ると、
「地球の日本では日没のようよ。時さん、ここから帰りなさい。」
「えっ、ここから、どうやって帰るんですか?考えられない事です。」
「貴方を光線に分解して、瞬時に地球へ戻すから。」
輝美子は計器盤にある一つのボタンを押した。その近くから流太郎に投射された黄色い光は、彼を包むと小さなスピーカーのような物の中に吸収された。流太郎の姿は、もう、その星には見えなくなっていた。

 流太郎は気が付くと、地球の日本の自分の部屋にいた。(あれ、今までの体験は夢だったのか・・・)と思ってみる。が、しかし、口の中に残っていた地球のものより甘いメロンの小さな果肉が、舌先に触ると、(やはり、あれは本当にあった事だったんだ!)
部屋は薄暗かった。太陽が沈んでも、しばらくは闇にはならないものだ。それでも部屋には照明が必要だ。流太郎は携帯電話で照明をつけた。これは部屋の外からでも、できる。インターネット接続で可能なもので、別に不思議なものではない。
不思議なのは鮫肌輝美子に連れていかれたレプティリアンの星だ。黄金の湖に、その中にあった五重の塔のマイニング施設。この事を誰かに話したい。今はまだ19:00PMだ。よし、電話を掛けよう。
流太郎はノートパソコンから通話する。パソコンの画面に株式会社夢春の籾山社長の顔が現れた。籾山も自分のパソコンを見ているようだ。籾山は口を開くと、
「日曜の今頃、どうしたんだ?時。」
と聞く、流太郎は、
「社長、今日は、とても不思議な体験をしました。五万光年先のレプティリアンの星に連れていかれたんです。」
「ほ、お。有り得るかもしれんな、そういう話。」
「潜水艦ヨットにも乗せてもらったんです。我が社でも開発できたら、いいと思います、潜水艦ヨットを。」
「そんなものは無理だな。資金なし、技術力なしだ。それより時、営業に行ってもらいたいんだ。明日、会社で話そうと思っていたが、丁度いい、今、話そう。」
「は、どこへ行けば、いいので。」
「あるUFO関係の団体が福岡市内にある。そこのホームページのサイバーセキュリティの依頼が、今さっき突然来た。会社に誰もいない時は、おれの携帯に転送される。日曜だけどな。だから、時。おまえも働いてくれ、とはいっても、そこに訪問するのは明日でいいよ。」
社長の籾山はパソコンの画面の中でニヤッと笑った。流太郎は、
「分かりました。明日、朝一番に行きます。」
「ああ、頼んだぜ。楽しみにしているよ。」
パソコンの画面から籾山社長の顔は消えた。向こうの方で電話を切ったのだ。
 翌朝、流太郎は早朝に出勤した。社長の籾山は、それより早く出社していた。さすがは社長か。籾山は社長の椅子から立ち上がると、
「やあ!早く来てくれると思っていたよ。先週より今週の我が社の株価に期待していい。それよりなによりも、まずサイバーセキュリティの営業に行ってもらいたい。出先は昨日パソコン電話で君に話した福岡市内のUFO関連団体だねー。中央区薬院にあるのさ。とあるビルの一室らしい。私はまだ行った事が、ないビルだ。ビルの名前はパインアップル・ビルらしいよ。地図も渡して置く。君の机の上に置いてあるから。」
籾山は貫禄の出て来た体格になっている。少し、腹も出て来た。流太郎は未だに線のように痩せた体だ。
「分かりました。行ってきます。」
「がんばってくれよ、ね。」
流太郎が部屋を出ていく時、籾山は右手を振った。

 福岡市中央区薬院は福岡市の中心部の天神より南にあり、私鉄の駅としては天神駅の南にある。この天神という名称は、小さな天満宮が祀られているところがあるところから、だ。今ではビルの谷間の中に、ひっそりと存在する。高度なテクノロジーの時代になっても、日本には、このような社が存在し続ける。
それは、かつて羽田空港を建設した際にも起こった、社を取り除けようとすると怪事が起こるからでもあろう。
私鉄の薬院駅を降りると、ビルが乱立している。国道から南へ五分も歩くとタワーマンションが、いくつも見えた。流太郎の小学校の同級生も、あのタワーマンションの中に妻子と住んでいると彼は聞いている。
この薬院ではタワーマンションが増えすぎて、小学校の教室に生徒が入りきれなくなった。それで、どうしたかというと小学校の建物も上に増築していったのだ。タワー小学校みたいに見える建物が流太郎の瞳に反映した。彼は歩道の区分のない道を、のんびりと歩いていく。UFO関係の団体か。福岡市では珍しい組織。いや、組織では、ないのかも。会社でも、ない団体だろう。流太郎にとってUFOとは見慣れて、乗りなれたものなのだが。だが、二十二世紀の今日でも一般的な日本人は空飛ぶ円盤に接触する人は少ない。そもそも明治の前の江戸時代は、もちろん、大正、昭和の初めまでUFOなどというものは誰の口の片隅にも上る話題ではなかった。それは世界的にも、そうではなかろうか。世界で最初にジョージ・アダムスキーがUFOを目撃したのみならず、中から現れた金星人と会話をしたのが1952年で、その会話は、もちろんテレパシーだったそうだ。流太郎の場合、異星人は日本語を知っていた。どころか流暢に話してくれたのだ。地球では外国に行く場合には外国語を知らなければ、いけない。日本に来る外国人は、おぼつかない人もいるけど大抵、日本語は勉強して、来る。地球に来る異星人は地球の言語を学習しているのだろう。それよりも、これから会う団体の主催者は日本人ではないらしい。
メールド・ヨハンシュタインという名前らしい。長年の活動で会員名簿も増え、クレジットカード決済もホームページ上に載せているためサイバーセキュリティが必要だ、そうだ。というのは電話で聞いた話。と頭の中で流太郎は思い出しつつ、目の前に見えたのはキリスト教の教会のような建物だ。
UFOアプローチ・ジャパンと横書きの表札があった。鉄条門のため庭らしきところも見えるが、入れない。と思ったら、スルスルと鉄条門は横に開き、流太郎が通れるくらいの隙間は空いた。(どうしようかな)と流太郎が思っていると、門のところにあるインターフォンのスピーカーから、「時さん、お入りください。」と若い女性の声がした。メールド・ヨハンシュタインは女性だったのか。流太郎は遠慮なく門内に入る。西洋風の庭園を横切ると玄関があり、そこでもチャイムを鳴らす前に玄関のドアは開いたのだ。
 玄関のドアの中にいたのは若い女性で、透明のような白さの肌の若い女性だった。緑色の瞳で、黒く長い髪は彼女の肩の下まで伸びている。流太郎は会釈すると、
「株式会社夢春の時と申します。サイバーセキュリティの件で今日は、お伺いしました。」
その女性はニコリともせず、
「ヨハンシュタインは不在ですが、わたしが応対します。さあ、中へ。」
と明瞭な日本語で話した。
西洋館らしく、靴は脱がなくてもいい。その女性がドアを開けた部屋は事務所らしかった。机は二つあって、ノートパソコンが置かれている。サイバーセキュリティが必要らしい。流太郎は、それらのパソコンを見ながら、
「ハッカーが欲しいのは、お金よりもUFO情報じゃありませんか?」
と尋ねると、その女性は、
「ええ、何度か狙われました。情報の一部はファイルごと持ち去られたものもあります。幸い、それらのファイルは、それ程、機密の高いものではなかったのですが。申し遅れました、わたし、ジェノア・フランシスといいます。」
彼女の瞳は深い湖のような静けさを漂わせている。流太郎は、
「こちらこそ、申し遅れまして、すみません。先ほどは苗字だけでした。時流太郎と申します。」

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2098年のキス
 2013年の現在、首都・東京などでは特に気軽な男女のキスが一目も憚らずに行われる事が少なからずあるらしい。これは今からもう少し前から見られる現象で、欧米の影響だといえるのだろう。
それと並行するように日本では、少子化が進んでいった。
2098年の現在、日本でそのような行為、すなわち、人前でキスをする事は公然わいせつ罪として逮捕されるようになった。その理由は、おいおい述べていく事とする。
他の現象としては、映画やテレビドラマなどは見る人も極めて稀となっているのだが、キスシーンはアダルトなものとして取り扱われ、テレビからはキスシーンが姿を消すなどしている。
ここまで取り締まられるようになったなどは、2013年に生きているあなたがたには時代の逆行のように思われるに違いない。
さてさて、そういう時代となっているから2098年現在、女性は外出時にはマスク着用が一般となっている。日本政府としても、マスク着用を義務付けようかという検討もしたが、中東の女性とは違う伝統のためにそこまではやらない方がいい、ということになり、法的に規制はされない。
それでも、大抵の女性は外出時、のみならず勤務時間帯もマスクを取らない。
ある平凡なサラリーマン家庭を見てみよう。女性は、その辺を歩いているような、よくみかけて顔も覚えられないようなありきたりの三十代の主婦、凡子は帰宅した夫、沙羅男(さらお)にマスクをしたまま、
「会社の方は、どうなの?」
と聞く。
「ああ、なかなか出世できそうもないよ。」
「じゃあ、わたし、まだパートに出た方がいいのね。」
「うん、すまない。でも、キスぐらい、おまえ・・。」
凡子は目で抵抗して、
「簡単に、させてあげられるもんですか。2000年初期の頃とは、違うんだから。」
沙羅男は、ふーっ、とため息をついた。それから独り言のように、
「あーあ。おれも2013年頃に生まれていればなー。そうしたら、もっと簡単にキスもできたし。」
「そんな、いやらしい事、夫婦だからって気楽に話さないでくださいな。その頃のキス映像は、すべて成人指定のアダルトになってるでしょ。今は。」
「そうだけどね。昔の人達は、気楽だね。」
「ずいぶんと昔だわ。公務員も勤めていれば、給料が上がったそうじゃない。」
「そうだったらしいね。役人天国だったんだろうな。でも、今はそれも違うね。おれの同級生も地方公務員になったけど、リストラされてね。」
「大変ねー。」
「風俗産業に入って、今は安定した生活を送っている。」
凡子は眼をきらめかせると、
「そうだ、あなた。風俗関係の仕事に転職なさいよ。自動車の会社なんているから、だめなのよ。何十社もあるでしょう、車の会社。」

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 美山響子(よしやま・きょうこ)は、三十歳、不動産会社勤務、独身、身長百五十八センチ、88>59>89のサイズで、通勤はフェラーリで通勤している。
満員電車では必ず、痴漢された。美山響子は男性の好みは限定されていたので、多くの男に触られるなど気分のいいものではない。もちろん、大抵の女性なら痴漢は気分が悪いものだが。それで、二千万円クラスの黒のフェラーリを現金で購入した。
インターネット検索で、フェラーリの販売店を探し出したのだ。フェラーリの公式ホームページから探せる。響子は福岡市なので、福岡の販売店を探すと、一つしかなかった。
2013年も一つだったが、2033年の今もフェラーリの販売店は福岡市にしかない。なにせ、トヨタがレクサスなどの高級車の販売に力を入れたため、高級外車は昔ほど売れなくなっていた。

響子は帰宅すると高級マンションの最上階で、宅配ピザを注文する。
「春吉の美山です。」
「毎度ありがとうございます。」
名乗った後に、間を置くのはピザの店の人間がパソコンから美山の情報を呼び出すためで、これはもう随分昔から行われている。
Sサイズのピザを二枚、注文した響子はフカフカのソファに座った。それから向こうの部屋にいる彼の体を思い出す。彼は料理、洗濯なんてやってはくれないばかりか、自分で歩行するのもままならない体だ。
それでも一昔前の彼のタイプの・・・
ピンポーンと、何十年と変化のないチャイムが鳴った。携帯電話の着信音なんて様々なものがあるのに、ドアのチャイムは何処も同じ、およそ建築関係の人間は発展性がないのだ。それが証拠とはいえるかどうか、日本の大手建設会社の起源は江戸時代の頃で、保守一点張りといえるのかもしれない。
玄関ドアを開けると、男子大学生アルバイトらしい青年が顔を出した。背も高く百八十センチはあり、フットボールでもやっていそうだ。響子は(ピザよりも、この青年の方がおいしそうだわ。)と思ったが、学生では面倒な事も多い。
「お待たせしました、ピザビッグです。」
ズボンと上着が繋がっている、いわゆるツナギの白い制服を着た大学生は
ピザビッグ!おいしさ二万倍。
と文字が印刷された白い箱を響子に手渡した。受け取って玄関脇の棚のところに置くと響子は、代金を払った。その宅配員の視線を胸に感じながら響子は、その男の股間を見ると白い制服に大きく張り出した格好になっている。(勃起しているのかしら)
「丁度、いただきました。ありがとうございます。」
深々と頭を下げた青年の股間を響子は注視していたが、ドアが閉まるまで張り出したものは、引っ込まなかった。

ピザビッグはSサイズも他の宅配ピザより、大きかった。響子の好きなメニューの一つがウインナーピザで、長さ二十センチのウインナーを先に手にとって、男性のペニスを頬張るように口に入れる。
このウインナーピザの注文は独身女性からが最も多かったので、ピザビッグの経営者は、含み笑いをしながら、
「裏メニューを開発しよう。簡単だ。ウインナーを男性器の形にするんだ。それをバイブ版、という形でメニューに載せる。メニューには、未成年のお客様は、このバイブ版は御注文できません、と但し書きは入れるようにする。さっそく、取り掛かってくれ。」
という発案に、開発スタッフが取り組み、できたものはバイブというより食べられるだけに松茸という感じの黒い大きなウインナーだった。
今、響子が口に入れたのは、この裏メニューのバイブ版だった。
(まるで、男の大きなアレみたい・・・。)
響子の舌は、その男性器と同じ形に作られた、というより勃起時の男性器と同じに作られたウインナーの亀頭の部分を舐め回していた。亀頭のカリも舐め回していく。
TANNERの第五段階、の男性器をモデルにしている。すなわち、最終的に成熟した男の性器である。
響子は上着を脱ぎ、シャツも脱いでブラジャーを外すと、TANNERの第五段階である自分の乳房を揉みながら、ウインナーをまるで男性の勃起したペニスにするように舌を這わせていった。
広い食卓に一人で座って、響子はウインナーにかぶりつく、のではなく、しゃぶりついている。
響子の白い大きな乳房はTANNERの第五段階のため、乳輪は後退して見えない。
世間的に見られるAVなどでの乳輪の大きな女性は、TANNERの第四段階であり、完全成熟とはなっていないのである。
空腹は、響子の想像を打ち破った。カリカリとウインナーは、響子の口の中で噛み裂かれる。胃袋から伝達される感覚が、彼女を現実に戻したのだ。
(彼は、寝室にいたわね。ダブルベッドで寝てるけど。わたしがピザのウインナーで、こんな事をしているのは知らないでしょう。)
そもそも、その彼との性生活に不満があるから、ウインナーもビッグサイズのものを求めるようになる。でも、それは彼のモノのサイズが小さいからではない。
ウインナーを食べ終わると、ベッドに寝ている彼のビッグなモノを想像して響子は笑顔を浮かべた。

ピザが入っていた紙の容器をゴミ箱に捨てると、響子は寝室に向った。ドアを開けると、ダブルベッドの片隅で全裸の彼が寝そべっている。響子は彼の股間に真っ先に、眼をやる。ビッグ!ただ、それはまだ固くなっていない。
その彼は、同じ不動産会社の同僚だった。年齢も同じで、三年前に結婚した。半年ほどは薔薇色の結婚生活だった。何が楽しいといって、仕事から帰って夕食を食べ、そのあとにすぐするセックス以外にあるだろうか。彼は大学時代、ラグビーをしていたのでタフだった。
響子を手早く全裸にしてくれて、先に全裸になっていた彼は、すでに怒髪天を衝くという言葉を変えて、怒棒天を向くという趣の姿態だ。
お互い立ったままの彼らは、響子が尻を向けて彼に寄り添う。彼は高く突き出した彼女の尻の間に見える大きな割れ目に、太く長いイチモツを突き入れると、響子の両脚を膝の後ろから両手で抱えて、空中に浮かせた。
駅弁体位の女性が、逆を向いた姿勢になる。駅弁体位の場合、女は男の肩に掴まったりするが、響子の今の体位は背中が彼の胸に密着して両手は空いている。
彼が響子の体を高く持ち上げるようにして、おろすという動作は騎上位を空中で行っている気になり、
「あっ、あっ、あっ。」
という悶え声を響子は止められなかった。空中に座ったまま、彼の雄大なペニ棒が出入りしている。それが、新婚生活で響子が最も好きな時間だった。
響子のマンコは締め付けが強く、セックスを終わった後、彼のペニスを観察するとその皮膚が締め付けられて赤くなっていた。
それ位の締め付けだから、彼も五分と持たないことが多かった。
不動産会社も多種あるのだが、響子の勤めているところは主に賃貸物件の仲介だ。福岡市の中心に近いところにあるので、家賃の高い部屋が多く、したがって仲介を頼みに来る人達も少ない。
平日の昼間など、午前中もだが、客は一人も来ないことが多い。高い家賃を払ってまで福岡市の中心に引っ越したい人達は、東は神戸まで見当たらない巨大商業地の天神でビジネスとか店を考えている人達なのだ。
響子は一人で店にいる事も、しばしばだったので、逆駅弁の夫とのセックスを思いながら指はスカートの中に入れて、パンティの上からマンスジを強くなぞって楽しむ事もある。
不動産の仲介店に行けば、どこでも座っている女性の下半身は見えないようになっている。だから、万一、客が入ってきても響子は指を素早くパンティから離せばよい。
大手建設会社の受付も暇なことが多いし、人も通らない時間が多いと受付の女性はオナニーに耽る事もあるらしいが、響子は店のドアが開く瞬間に手を離して来客用笑顔を向けるので、気づかれた事はない。
響子の夫は営業に回されていたので、部屋も違い、顔を会社で合わせる事もなかった。
それでも、二人が付き合っている事は社内では知れ渡っていた。それは狭い世間というところだろう。響子と彼が、会社の休日にラブホテルに入ったのを見た社員がいたらしい。
休みの少ない不動産会社の休日に、二人はホテルで朝から晩までセックスした。
昼の食事も、そこそこのホテルに泊まるようになってからは、部屋に持って来てもらうようにした。その昼食を受け取る時だけ、彼が衣服を身につけた。大抵は若いホテルマンが、台車で昼食の上に布をかけて持ってきた。その時には、一発は響子の尻の中に射精していたし、入り口から見えないベッドで響子は全裸で寝そべっていた。
不動産会社の休日だから、水曜日、響子の会社も水曜日が休みだ。昼食を食べ終わった二人は、再び全裸で抱き合う。窓のカーテンも締め切っているけど、その外の下の空間では忙しそうに白いカッターシャツを着たサラリーマンが、歩き回っていた。
正常位で挿入しようとした彼に響子は、
「昨日のお客さん、案内した部屋の中で、さりげなくだけど、わたしのお尻をむにゅーと掴んだのよ。」
と告白する。彼の勃起したイチモツは、響子の膣口の前で停止した。
「ええーっ、それだけか。」
「うん、それだけ。」
「よーし。おれがもっと、おまえの尻を愛してやる。」
彼は響子を、うつ伏せにした。大きな二つの乳房が、プルンと揺れる。尻を高く上げた響子の股間には、大きな淫裂の線が彼の眼にイヤラシく映った。潤んだその長い割れ目に、彼は長大なモノを根元まで突き入れた。響子は尻を震わせて、顔を横向けにすると、
「あああ、すっごく、いい。マンコ、気持ちいい。こすって!」
と淫らに悶えた。頬が紅色に染まっていた。不動産会社で働いている時の顔とは、別人のようだ。恐らく、AVに出ても分からないのではないかと、思われる。
この頃のAVはマンネリ化して売り上げも落ちてきていたのだが、テレビに出た、もしくは出ていた芸能人を出演させるという企画で、どうにか持ちこたえていた。狙い目は昔、大人数で歌っていたあの数十人単位のメンバーをどれか一人でもAVに出せば、昔のファンが必ず買うという現象がある。メンバーの二人を同時に出演させて、男優四人と絡ませる。そういう企画ものは、四十万枚もの大ヒットとなった。AVは昔からレンタルされるのが普通で、十万枚も売れれば大ヒットだった。
昔のファンには、たまらないシリーズだった。握手をしたファンは、一人で二枚は買った人もいる。
傑作なのが、この元アイドルグループのシリーズものを三十枚買うと、誰か好きなメンバーとホテルで、しかも高級ホテルで一泊できるというものだった。そのシリーズのDVDに付いている応募券を集めて郵送すれば、東京のホテルまでの往復の旅費まで旅行券がついて好きなアイドルとの夜が過ごせた。大抵は三十過ぎになっていたメンバーが多いけど、その高級ホテルの従業員の話では、そのアイドルと泊まっている客の部屋では一晩中、灯りがついていて、その元アイドルの悶え狂う下品な悶え声が四、五時間続いて聞こえた、とか、朝、その元アイドルが蟹股でヨタヨタとホテルの通路を歩く姿が見られるという。
やはり一晩中、大股開きにさせられて、熱くなったファンのモノを受け入れていると股ずれが起きる事もあるらしい。
元メンバーの中には、結婚しているものもいたけど、旦那公認でそのAVに出ている場合もある。その場合も、応募できるのでシリーズ累計二百万枚の売り上げを記録しつつあるAVのミリオンダラー箱である。
オンデマンドという言葉があるけれども、これ以上に客の要求に応えたシリーズは過去には、なかったろう。
これらのシリーズものの売り上げは、低迷しているCD業界などには垂涎の的ではあったが、彼女等の悶え声だけを収録したCDも大した売り上げには、ならなかった。
彼女達が出るAVをAVB24と称していた。アダルトビデオ部隊24の略だった。

結婚が決まるまで部屋に入れてくれなかった響子の彼、だったが、結婚が決まって、
「おれも包み隠さず、部屋を見せる。」
と男らしく公言するように話すと、薬院という福岡市の中心に近い場所の二十階立ての十五階に住む、彼の部屋に響子は連れて行ってもらった。
神戸の人口を抜いて、名古屋に迫ろうという福岡市でも高層マンションの建築はボツボツだ。それは郊外にまだ、土地があるからである。神戸の人口より少ない頃も、高層マンションを多く作るという発想は福岡市内では、あまりなかった。東京のように完売できるかという心配もあったと思われるが、新築のマンションはすぐに満室になったり、分譲マンションは建築中でも完売御礼が出るのが福岡市である。

推理小説・無料体験版・盗まれた名画の秘密

 春川智明、年齢は三十歳、160センチの小柄にして体重は60キロというと太めの体かと思いきや逆三角形の上半身で背広を着ると着やせするタイプなのだ。
彼は福岡市に探偵事務所を開き、インターネットによる集客で大いに金を稼いだ。ホームページは何という有能なセールスマンだろう!
おかげで春川は宣伝広告費は払わずに済んだのだ。ウェブサイト制作を業者に頼んだのが宣伝経費と言えなくもない。業者の男は、
「春川さん。スマートフォン向けのサイトも作りませんか。お安くしておきます。」
と携帯電話に連絡してきたが春川は、
「それは今のところ要らないよ。顧客は金持ちでないといけないわけだ。年齢もそれなりにいっている男女からの依頼によるものだからね。
ぼくのところにはアクセス解析ではスマートフォンから来ていないんだ。」
「そうでしたか。そういえば、そんな気もしますね。又、よかったらメール下さいな。」
「ああ、何十年先になるかな。」
それを聞いた担当者は絶句したようだ。携帯電話は唐突に切断されたのであった。

 春川は(ああ、浮気調査ばかりだ。しばらく休みたい)事務所の外に見えるのは福岡市南区井尻の湯気の立つような風景だ。それにも彼はウンザリした。
もともと春川は探偵小説に感銘を受けて探偵を志したのだ。しかし、殺人事件を日本の探偵、いや、どこの国の探偵も取り扱うことはないといっていい。
携帯電話にメールが着信された。
開いてみると、差出人は害人三十面相だった。

 ご機嫌いかがかな、春川智明君。
君は浮気調査に飽き飽きしていると思う。だから、吾輩が君を刺激してあげようと思う。福岡市東区にある埋め立て地に新しく美術館ができたのは、ご存じだな?
そこで日本画の巨匠 幻界灘男の展覧会が行われている。吾輩は幻界画伯の名画を見事にいただくつもりだ。
警察に通報するもよし、地方新聞に教えるなり、いや、それよりもはるかに強力な手段、ネットで情報を流すのも結構。
楽しみたまえ、それでは。

害人三十面相より、だよー。
(ふざけた話だが、本当かもしれない。)
と春川は思考した。
幻界灘男は日本画といっても白黒の枯淡な水彩画などではなく、現代日本を描く画家で年齢は七十にもなり、一部の熱烈な崇拝者によって高額な値が美術オークションなどでつき、海外、特にイギリスの美術愛好家の資産家連中の購入意欲を誘う数少ない日本人なのだ。
その絵は神秘的にして宗教的な作品もあり、東京のスカイツリーの上に立つ観音菩薩の姿などが見られたりする。
幻界灘男は福岡県福岡市の出身で東京在住、分譲マンションの最上階に住む。旅行好きで自宅を開けがちなため、以前、戸建て住宅に住んでいた時に盗難にあい描きかけの作品を持ち去られたことがあった。それで今は二十四時間警備付きの分譲マンションに住んでいるのだ。
それ以来、盗難事件は起こっていなかった。幻界灘男の絵は福岡市でも来場者が多く毎日盛況な東区の美術館であるが(田舎というほどではないにしても福岡の美術館だから警備は手薄かもしれない。害人三十面相も目の付け所が、さすがなのかもしれないなあ、うむ。)と春川智明は思うのだが、しかし彼は私立探偵、こんな犯罪予告には興味はなかった。

幻界灘男の展覧会は一階の展示室で行われていた。午前九時から午後五時までの間だが、その日は春川智明に予告された日から一週間経った月曜日、つまり美術館は休日の日。
美術館は警備会社に委託して警備にあたっている。展示会が始まって十日、何事もなく過ぎて、大抵の美術展はそうなのだが、警備員の気も緩んでいる時だった。
警備員は控室でモニターの画面を見ている。二人の警備員は三十代の若い男性、二人とも独身だ。
「退屈だなー。」
「こんなもんだよ。ドラマか映画じゃないから何も起こらないのが普通じゃないか。」
と彼らは話し始める。
「柔道をやってきて女なしの青春、就職難でこの警備会社には入れたけど、事務員は四十代のおばさん。大学は男がほとんどの東京の大学でね。」
と武山は話す。
「そうか、おれも同じだよ。俺の場合は空手だけどな。瓦は二十枚くらい重ねて割れるけど。」
と滝道は答えた。武山は、うなずくと、
「おれもだ。」
「このまま一生を終わるんだろうか。」
「仕事は、それでいいけど。女との出会いはないとねー。」
「空手って女でもやっている人が、いるだろう?」
「それは柔道だって、同じだろう。」
「ああ、でも、あまり好みじゃない。」
「それは、おれもそうさ。」
その時、ドアが開くと若い女性が顔を出した。武山と滝道が武道家らしい目で、その女性を見たが何という美しい顔立ち、長い髪と赤い唇は笑顔を作り、両の瞳は涼やかに黒目が大きい。
「失礼します。わたくし、今日から入館しました江浦(えのうら)みさきといいます。これから、よろしく、お願いします。」
甘く透き通る声だ。身長は百六十センチ弱というところ、当美術館の制服を着ているし胸には館員証をつけている。
二人は武道家らしい構えを解いて雇われている警備員らしき態度に変わると、
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
と口々に挨拶した。
江浦みさきは一歩、部屋の中に進み出ると、
「さっそくですが、幻界灘男画伯の展示中の絵のうち、「観音菩薩の慈悲」を持ち出すことが必要なんです。それは今日一日ですが、画伯からの要請なのです。
ですから、警備の方に了解いただきたいと思いまして。」
「観音菩薩の慈悲」は時価、三十億のもので、東京のある宗教団体から美術館がレンタル料を払って展示会のために借りているもので、今回の展覧会では最高の日本画だ。
アメリカの自由の女神の頭上はるかに高いところに観音菩薩が空中に現れて、右手でオーケーの印を作り、左手は手のひらを上にして前に差し出している構図である。
青紫の靄が観音菩薩の周囲に漂う神秘的な感が見る者の気持ちを惹きつける。

武山と滝道は互いの顔を見合わせると、武山が答えて、
「わかりました。どうぞ、我々はモニターで見ておりますから。」
と笑顔になる。
江浦みさきは胸のポケットからキャンディーの包みの様なものを取り出すと、
「とても香りのよいキャンディーを幻界画伯から戴きましたの。警備の方に、あげてほしいとのことでしたから。」
と話しかけて優しい手つきで二人に差し出す。二人は右手のひらを差し出して、
「いただきます。」
とうれしそうな顔で、そのキャンディーを受け取った。江浦みさきは
「鮮度が大事なキャンディーですの。すぐに召し上がってくださいね。」
ニコリとうなずくと、部屋を出て行った。

江浦みさきは香水とは違う若い女性の持ついい匂いを警備室に残していた。武山は、
「新しい館員さんらしい。毎日、楽しくなりそうだな。」
「うん、このキャンディーも、いい匂いがするな。」
「食べよう。鮮度が大事なんだって、言ってたな。」
「ああ、そうしよう。」
二人はキャンディーの包みを解いて大粒のそれを口に入れた。甘く広がる洋風な味、二人はモニターに向き直った。

二人とも「観音菩薩の慈悲」が展示されている場所のモニター画面を見入る。そこに、もうすぐ江浦みさきが現れるのだ。だが、二人は美人館員の彼女を二度と見ることはなかった。

夕方の六時になった。警備員交代の時間だ。武山と滝道と交代する夜勤の警備員二人は警備室に入ると、
「おい、起きろよ。交代だっ。」
「なんで寝ているんだぁっ。」
と口々に大声で叱咤した。
だが、椅子の上でぐったりとしている二人は目を覚まさなかった。
「しょうがないなあ。おい、起きろよ。」
「いつから寝ているんだよう。」
二人は武山と滝道の肩を揺さぶった。
「死んでいるのか。」
「まさか、まだ体温はある。」
「そうだな。脈もある。」
「救急車を呼ぼう。」
一人が携帯電話で救助の連絡を取った。

武山と滝道は救急車で運ばれていった。
「館内に異常はなかったか、見回ってくるからな。」
「おれは、ここでモニターを見ているよ。」
見回りに出た警備員は真っ先に「観音菩薩の慈悲」を確認しに行った。大丈夫、盗まれていない。壁面に高額の名画は鎮座ましましている。幻界灘男のほかの作品も点検しに回った警備員は何も異常はないのを確認した。

近くの病院に運ばれた警備員の武山と滝道は深い昏睡状態から医師の手当てで五時間後に目を覚ました。二人は意識を取り戻すと、
「なんで眠ってしまったのか。あのキャンディのせいじゃないか。」
と武山が隣のベッドの滝道に慌てて問いかける。
「ああ、そうだ。他に思い当たらないぞ。あの女が・・・大変だ。絵が盗まれているんだっ。」
滝道は右手のこぶしを握り締めた。滝道はベッドわきの携帯電話を取り、会社に電話を掛けた。
「もしもし、滝道です。あ・・・今、気を取り直しました。」
「そうですか。それは、よかった。部長に変わります。」
電話の相手は警備部長に変わった。
「おう、滝道君。とにかく、よかったよ。」
「大丈夫なんですか。絵が盗まれていませんか。」
「いや、異常はなかった。それは直ぐに確認しに行ったそうだ。」
「それは、よかった。ほっ、としました。」
「完全に治るまでは寝ているように、な。」
「はい、でも、もう出勤できます。」
「武山は、どうなんだ。」
「武山も大丈夫みたいですが。」
「それなら、いつ来てもいいぞ。」
電話は切れて、そばで聞いていた武山も安堵の胸をさすっていた。

 翌日の午前、幻界灘男展は平日とはいえ、そこそこの人が入場していたが、目玉の「観音菩薩の慈悲」の前に立ちすくんでいる一人の中年の太った男性が、
声を出した。
「違う。これは本物の「観音菩薩の慈悲」じゃない。」
少し大きな声だったせいか、近くに座っていた女性美術館員が近づいて来て、
「どうか、しましたか。」
と尋ねてくる。
「これは贋物ですよ。私は幻界先生のこの絵を宗教団体に売ったのです。その時、注意深く、まあ、どの絵でもですが、見ていたので贋物は分かるのですよ。」
四十代の女性美術館員の顔は、みるみる青ざめた。眉を寄せると、
「館長に連絡します。」
と言うや近くの警備員に走り寄って話をした。

五分もしないうちに六十代初頭らしき眼鏡を掛けた紳士然とした男性が背広姿で、その場にやってきた。口を開くと、
「≪観音菩薩の慈悲≫が贋物だと、おっしゃるのですね?」
と画商らしき男性に話しかける。
「ええ、間違いありません。」
「よろしい。警察に届ける前に確認した方が、よさそうですな。幻界画伯に連絡しますよ。そうすれば、なによりも確かですからね。」
館長の眼鏡の奥でギロリと丸い目玉が光った。美術館の館長として大事な絵が盗まれたとあっては恥辱の極みとなる。すぐに警察に連絡するのは、とにかく避けた方がいい。
 それに美術品の盗難など警察は何処の国でも本腰をすぐに入れてこない。館長の目から見て本物か贋物かは実は分からなかったのだ。
ということで幻界画伯の登場となるわけだった。

その前に美術館長は警備会社に今一度、館長室に戻ってから電話で警備のことで尋ねてみた。
「最近、特に不審なことは、ありませんでしたね。」
警備部長は即座に、
「ええ、ありませんでした。防犯カメラには不審な人物は映っておりません。江浦みさきさんという新人の館員さんが幻界画伯の【観音菩薩の慈悲】を持ち出されるのは映っていますが、その後、ちゃんと戻していますから。」
館長の表情が変わると、
「江浦などという館員は、うちには、いないのですよ!」
「えええっ、では、その女が・・・でも、戻してはいますよ・・・。」
「うむ。それは・・・。」
贋物だ、と言おうか言うまいかと館長は迷ったが、
「うん、絵はあります・・一応、確認のためです。以後も、よろしく。」
急いで電話を切ると、
江浦みさき、か・・・と館長は心の中で呟いた。
そんな館員は、かつて、いたためしはない。自分が館長になってからは、そうだ。それに新人の館員さん、と警備会社の部長は言っていた。そんな新人は、この美術館には存在しないのだ。

 翌日の朝早く、美術館が開館になると同時に幻界画伯が木製ステッキを携えて現れた。
館長室に職員に案内されて入った幻界に館長は揉み手をして、
「これは、幻界さま、お越しいただき恐縮です。」
と云うと立ち上がり、
「さっそくですが、「観音菩薩の慈悲」を見ていただきたいのです。どうもわたくしの勘では贋物とすり替わっているような気がします。」
「なんだと!ちゃんと管理しておるのかっ。とはいえだな、あの絵は既にワシの所有物ではないのだ。画商に売っておるのだからな。」
ステッキを振り上げて仁王立ちの画伯は、怒りの顔の後は平静に戻った。そしてポツンと、
「連れて行ってもらおう。ワシなら、すぐに分かる。」

館長と女性職員、そして幻界画伯はまだ客のいない「観音菩薩の慈悲」の前に移動した。
名画の前に近づいた画伯は、
「おお?これは贋物じゃ。よく似せて描いておるが、紫の光は微妙に違うし、観音様の目などワシほど丁寧に描写しておらん。館長さん、あんたのご指摘通り、これは贋物じゃよ。」
幻界画伯は呆れた顔をした。それから、
「つまりは盗まれたのだね、君。」
「ええ、そうなります。」
「そうなるとは、なんだ。警察に届けたのか。」
「いえ、まだでございます。」
「どうするつもりか。」
「警察に届けるのは却って危険かもしれません。まだ犯人からの要求も、ありません。」
「犯人の要求通りにしないと、む、燃やされるかもしれんな。」
「そういうことも考えられます。」
「では待つか。要求を。」
「そうするしか、ないでしょう。」
そこへ警備員が駆け付けると、
「館長、犯人らしき人物から警備室のパソコンにメールが来ました。
なんでも害人三十面相とか名乗っているのですよ。」
「なに?害人三十面相、前に高宮の宝石店から宝石を盗み出した事件が、あったのを覚えている。」
警備員も、
「それは私も覚えております。あの事件の後、うちの警備会社で営業に行って今ではそこをうちで警備しております。」
「ふふん。そこも大丈夫かな。ここは、やられたではないか。」
警備員は返答に窮した。
幻界画伯は不満そうに、
「とにかくな。この贋物の絵は外してくれ。これがワシの絵だと思われれば目のある人たちは奇異に思うからな。」
と抗議したので館長は、
「は、直ちに取り外します。おい君、この絵を取り外すんだ。」
と駆け付けた警備員に指示した。

展覧会の一番の注目品は取り外されて、そこには
「調整中」
という張り紙が張られた。

その日の午後一時に美術館に電話があった。それは盗まれた絵画の建材の所有者である宗教団体の幸福霊会からだ。
四十代の男性の声が事務室の電話に、
「幻界さんから聞きましたがね。おたくに貸している「観音菩薩の慈悲」が盗まれたそうですな。」
電話に出た女性事務員は、
「館長に、おつなぎします。お待ちください。」
それで電話は館長に、
「もしもし、お電話変わりました、館長の・・・。」
「絵が盗まれたそうですねえ。」
「はい、申し訳ありません。必ず、取り戻しますので、ご心配なく。」
「あの絵が展覧会終了後にないと、ちと困るのですよ。ニューヨーク支部に持っていく予定なのでね。」
「あと十日あります。必ず取り戻します。」
必死に懇願する館長の言葉に何の反応もなく電話は一方的に切られてしまった

体験版・ブルジョア気分でセックスしたい

 照山秋絵は福岡県福岡市南区井尻に住む、二十八才の主婦だ。人口百五十万人を突破した福岡市は、全国で六番目に人口が多いところ。照山秋絵は福岡市の生まれ育ち、夫の照山幸次郎も同じだ。
照山秋絵の身長は158センチ、B86 W59 H89となかなかの身体であるけれど、顔は美人と言うより知的な印象を与える。
それもそのはず、秋絵は九州大学文学部国文学科を出た才媛で福岡市内の不動産会社に勤務した後、夫の幸次郎と結婚した。
夫の幸次郎は身長178センチと高く、やせ型で出身大学も秋絵と同じ九州大学で経済学部の卒業、二人は同い歳で学生時代には同棲していた。
秋絵の実家は福岡市内にあるけれども、東区にある九州大学には遠いため、大学のある箱崎という町に1LDKの広い部屋を娘に借りてやった。
大型冷蔵庫まで備え付けてやった父親の配慮は、幸次郎との生活に大いに役立った。大学四年の夏に同凄を始めた。出会いは、その年の春に大学正門を抜け出た秋絵に後ろから幸次郎が声をかけたのだ。幸次郎は秋絵の大きな尻がぷるんぷるんと左右に揺れるのを見て、胸に込み上げるものを感じた、追いすがると幸次郎は、
「ちょっと、君。いいかな?」
「えっ、なんですか。」
振り返って立ち止まった秋絵の顔は美人ではなかったけども、幸次郎の視線は秋絵の胸に移動すると、その豊かな膨らみを認めて合格点を心の中で与えた。
「この近くで、お茶でも飲もうよ。」
「いいわよ。」
幸次郎の実直そうな顔はハンサムでなかったため、秋絵は安心したのである。つまり軽いナンパではないと、値踏みした。
秋絵のような知的レベルが高い女性に限らず、ハンサムな男性は女性は敬遠する。結婚するのにいやな男性の一番目は
女癖の悪い男
だそうだ。幸次郎は、
「じゃあ、連れて行くよ。」
と秋絵を誘導した。個室喫茶みたいなその店は、周囲を気にせずに話せるのがいい。
幸次郎は目の前に座った秋絵が大きく足を開いたので、白いパンティが眼に留まったが、すぐに秋絵は足を戻した。
幸次郎の口の中に唾液が出てきた。二十一歳の女性が持つ香りみたいなものを彼は、鼻一杯吸い込んだ。すると、股間のイチモツが少し反応してしまった。でもまず、会話をしなければ・・・
「君、頭がよさそうだね。」
と口火を切ると、秋絵は平然と、
「そうかなあ。文学部だから想像力の方が優先されると思う。」
「文学部ねー。ぼくは経済学部だよ。」
「それじゃあ、違いがありすぎるかもね。」
「男女の差ほどは、ないと思うよ。」
秋絵はくちびるの左右を両方上に上げた。目じりも笑って、
「気障な表現ね。それ。」
「文学的かな、と思って、言ってみたんだけど。」
すてきな人だわ、と秋絵は思った。この歳になるも男性経験ゼロの彼女は、男に声をかけられたのは、これが初めてではない。やはり、喫茶店に連れられていって、さて話を聞いてみると英会話教材のセールスだったり、あやしげな新興宗教へのお誘いだったりした。
それというのも秋絵は二十歳までは貧乳だったし、貧尻だったのだ。ここ一年ちょっとで、大きく女としては発育したのだが、秋絵の身体を見て好色な視線を注ぐ男も、彼女の顔を見るとまともな顔に戻った。つまりは、秋絵を軽い女と見ないということで、これは正解だろう。
目の前の男は過去の男性とは違う、と秋絵は直感したので、
「文学も好きなのかしら。」
と、弱弱しく尋ねると、
「ああ。ぼく、文学部に入ろうと思ったんだ。そしたら、高校の担任の先生が反対してね。男は、経済だっていうものだから。」
「なるほど、そうね。わたし、兄がいるけど、やはり経済学部に通わせられたのよ。兄も文学好きだけど、うちは明太の会社ですから。兄は社長にならないといけないし、父が、
『文学部にどうしても入りたいのなら、学費は新聞奨学生にでもなって稼ぎなさい。』
と言うと、素直に経済学部に入ったのよ。京都大学のね。」
「京都大学になぜ?」
「うちは、もともと京都なのよ。でも京都も博多も美人の産地だから同じね。わたしは美人じゃないけど。」
「そんな事ないよ。君は綺麗だ。というとお世辞めくから、本当のところは知的美人だな。」
秋絵は、うなずいた。その日は、それから携帯電話の番号を教えあって別れた。

それから数ヶ月後のある夏の朝、秋絵は幸次郎の荒々しい、いつものセックスを堪能していた。学生同凄である。鉄筋マンションの六畳の部屋で朝と晩、幸次郎に抱かれて九州大学に通った。
避妊具なしの性交は、幸次郎も覚悟の上だ。妊娠しても、出産は卒業後になる見込みで、秋絵が見込んだとおり幸次郎は真面目に二人の関係を考えていた。
勉強もあるし、週二回のペースでセックスに朝晩、一時間ほど励む。若いのに少ないと思う奥さん方は、セックスレス夫婦も世の中には多いという事を考えるべきだ。
初めて知った男のちんぽを、秋絵のまんこは離さなかった。文字通り秋絵の膣は幸次郎の竹のような男根を力強く締め付けた。幸次郎は外は暑くてもエアコンの効いた秋絵の部屋で下の布団一枚で、秋絵の上に乗り高速度で腰を前後に振りながら、
「おおー、秋絵―っ、ちんこがしまっていいー。あっ、出るっ。」
と叫ぶと、男の精密エキスを心置きなく放出すると、柔らかく大きな白い尻を若々しく震わせながら秋絵は、
「おまんこ、いいーっわっ。」
と叫んで、幸次郎の尻を両手で掴んで自分の方に引き寄せた。二十分の前戯と二十分の性交、二十分の後戯で朝晩のセックスは構成されたが、この時間はそれぞれ短くなる事も多かった。
九大生でもあるし、試験前にはセックスを控えておいた。試験が終わると徹夜でセックスに励む二人だった。
一晩最高、三回というのが幸次郎の記録である。秋絵の上で果てた後、幸次郎は、
「三回が限度だろう。度を超して射精すると下手したら死ぬかもしれないらしいよ。」
彼の顔を十センチ前で布団の上に横になって眺めながら、秋絵は、
「本当なの、それ?」
幸次郎は秋絵の大きな尻を優しくつかんで揉みほぐすようにすると、秋絵は、アアン、と眉を寄せて呻いた。幸次郎は、
「豊臣秀吉の本当の死因は、女とやりすぎたかららしい。三百人以上の女性とセックスしたあと、秀吉は死んだんだって。」
秋絵は幸次郎の小さくなった肉欲棒を右手で掴んでみた。すると、それは少し膨らんだ。
「そうなの。わたし、あなたに早く死なれたら困るわ。まだ学生だしなー。本当のセックスは、結婚してからね?」
「今でも世間のセックスレス夫婦よりは、セックスしているよ。そんな夫婦、奥さんが可哀想だよ。中には・・・・。」
と秋絵の硬さの残った乳首にキスすると幸次郎は、話し出した。

関東の方の主婦でさー、カリスマ主婦っているんだよ。アフィリエイトですごく稼いでいてね。アフィリエイトってインターネットで、企業やお店の商品やサービスを紹介して儲けるんだけど。
その主婦のアフィリエイトへのきっかけが、だんなのボーナスが出なかった事らしい。
こどもの教育費だけでもと、その主婦は考えたらしいね。
――――――――――――――――――――――――――――――
「登喜子、すまない。おれ、今年の夏のボーナスはなしだ。」
敬二は妻に話した。
「しかたないわよ。社会的な不景気ですもの。でも、いいわ。夜のお勤めだけでもしてくれれば。」
三十後半の登喜子は、色っぽい眼をして夫を見た。敬二は、
「ああ。ボーナスがないぶんだけ、夜のボーナスを出すとするか。」
と食卓で子供の寝静まった頃に、妻に答える。
いそいそと、食器を片付ける登喜子に敬二は後ろから襲うように抱きつくと、彼女の首筋を舐めまわした。登喜子は身をくねらせながら、
「ここじゃ、やめて。子供に聞こえるかもしれないから。」
「いいさー、聞かれても。おれたちの子供だろ。」
敬二は固くなったモノを妻の尻に擦り付ける。じわーっと、まんこが濡れるのを登喜子は感じたが、
「あなたみたいなスケベに、なってほしくないもの。」
と笑うように答えると、ふっと敬二は登喜子から離れて、
「大体、子供の教育で疲れたとか言って、ここしばらくご無沙汰だっただろう。だから、ボーナスないんだよ。」
「そんな・・そんな事が、ボーナスと関係あるの?」
「いや・・・言いすぎだな。関係はない。不景気が原因だろう。でも、おれの性欲は好景気なんだよ。」
敬二は自分の方を振り向いて立ったエプロン姿の妻の両肩を捉えて、キスをした。すぐに敬二は舌を差し込んだ。妻は柔らかく、それに応える。ぐんぐんと敬二の肉欲棒は大きくなっていった。エプロンとスカートをしたままの登喜子のパンティを身をかがめて、ずり降ろした敬二は妻のエプロンとスカートを上に上げた。豊かな陰毛が丸見えだ。敬二は妻を抱えて、台所の食卓の上に乗せると足を広げさせた。妻が腰掛けている食卓の部分は、いつも子供が食器に顔を向けているところだ。
登喜子は愛汁が溢れてきたので、声を出さなかった。敬二は妻の両足を抱えるようにして、いつの間にかズボンのチャックから出している金剛のような棒を妻の開いた穴の中に挿入していった。
夫の首にぶら下がるようにして、声を出すまいと頑張った妻の登喜子は夫が割りと早く放出した時に、
「あ、はーんっ。」
と艶かしく悶えると、食卓の上で腰を震わせた。

銀座のキャバクラに立ち寄った敬二は、ナンバーワンのあゆみに、
「今月から愛人やめても、いいのね?」
とトイレの前で聞かれた。
「すまない。夏のボーナスの後払いにしてくれた君には悪いけど、次のボーナスは確かじゃないし・・・。」
あゆみは冷たい眼をすると、
「いいわよ。お金に予定立ったら又、声かけてね。」
すぐに背を見せて歩いて行くあゆみの尻を見て、半分ちんこを勃起させた敬二ではあった。
数ヶ月、あゆみは敬二の愛人として都内某所にある彼女の自宅の高級、高層マンションの最上階まで敬二は、退社後、訪れていてはセックスレスとなった妻の代りにしていたのだ。
手付金というか前金をいくらか払っただけで、あゆみは敬二との愛人関係を了承していた。
敬二の今夏のボーナスは、あゆみへの銀行振り込みで跡形もなくなくなっていたのだ。やせていても胸と尻の大きなあゆみの身体は、敬二のちんこを捕らえて放さなかったのだが、昨夜の妻との台所でのセックスは、続けて夫婦の寝室での二回目にも持ち込めたので、妻は三十代後半とはいえ自分専用の女で、そういうまんこも持っている事がわかった。
なんとも、嵌め心地がいい。若いが、あゆみのまんこは遊び馴れているらしく、締まりのないようにも感じられると思い出す敬二だ。

次の日、敬二は又、台所で妻の身体を求めたが、
「ごめん。今からわたし、仕事なの。」
と拒否された。
「仕事?どこへ行くんだ、今頃から。」
「パソコンで、できるのよ。アフィリエイトって言うんだけど。」
「・・・・。」
「少し稼げば、セックスできると思う。」
登喜子は、すぐに台所から消えた。
次の日、敬二は食事後、トイレに入った妻にドアの前で、
「もう、終わったか?」
中から、
「終わったわよ。今はパンツはいてるところ。」
ガタッと勢いよくドアを開けると敬二は、パンティをあげようとしている妻に襲いかかった。登喜子は、
「やめてっ、こんなところで。」
と声を出したが、その唇は夫にふさがれた。それでも、口を外した夫に、
「アフィリエイトやってると、儲かるのが分るのよ。お願い、ここでのプレイはいつかするから。」
と両手を合わせた。夫は、たてていたモノが萎んでいくのを感じた。

幸次郎は寝そべったまま、
「それからしばらくして、その主婦はカリスマ主婦として有名になったし、という話。」
と秋絵に語った。秋絵は、びっくりしたような顔で、
「カリスマ主婦って、本当は大変なのね。実情は。」
「ああ、その夫の裏話もネット界のパパラッチが探り出したらしいよ。」
「ふーん。そうなのね。」
それから二人は朝陽の光が射してきたので、起きて服を着て大学に行く準備をした。
ドアを開けない玄関の中で、立ったまま二人はキスをしてから外へ出る。
九州大学は国道三号線沿いにある。その車道の大学側の歩道に沿って白い壁が延々と続き、中の様子は見えない。2013年の今は、かなりな部分が西区にできた新しい九州大学用地に移転しつつあり、2019年には完全に西区元岡という福岡市西の郊外に完全に移ってしまう。秋絵と幸次郎の頃には、第一ステージとして移転が始まっていた。最初のステージでは理系の学部だったので、幸次郎と秋絵は関係なかった。
 二人とも授業は真面目に出て、それが終わっても一緒に帰る事もなかった。近年よくあるカップルが手を繋いで並んで歩く、というような事もする事はなかった。むしろ、二人はそうするのを避けた。
なぜか、というと秋絵の手を握っただけで幸次郎は勃起したからだ。
東京でも福岡でも見られる手を握って歩くなどというカップルは、セックスレスなものと思って間違いない。ちんこを立てつつ街を歩くなんて事は、いくら男でもなかなかできないからだ。
また、その接触から即座にセックスに移行できないというのも、その男のインポ体質を表している。
手を繋いで歩けるのは、小学生までである。
大抵は幸次郎が先に部屋に帰っている。秋絵はもちろん、合鍵を彼に渡した。夕食の食材をコンビニで買って、秋絵が戻ってくる。
前に一度、二人で外食した。箱崎商店街の中にあるイタリア料理店は、小さな店で顔を合わせて食事をするにはもってこいのところだが、その頃、二人は週二度のセックスという慣習に馴染んでいて、その日が、やる日だったのだ。前菜に続いてパスタが運ばれた。幸次郎はフォークを取ろうと、まとめておいてある小さな細長いかごに手を伸ばすと秋絵も同じところに手を伸ばしていた。
二人の手は触れ合った。幸次郎は、右手の指先から女の色香が電流のように腕を伝い、喉から下腹部へと流れていくのを感じた。彼は、
「あっ。先にいいよ。」
と慌てて右手をどける。
「うん。お先に。」
秋絵は幸次郎より先に銀色のフォークを掴んだ。そのフォークは、クリストフルシルバーの大きなものだ。40ミクロンで銀メッキされているが、銀そのもののフォークは中々、作られるものではない。カトラリー(スプーン、フォーク、テーブルナイフなどの食器類)も贅沢にというのがそのイタリアレストランの趣旨だった。店主は時々、イタリアに今でも行って本場のイタリア料理を食べてくる。のみならず、昔修行したレストランに戻って手伝う事もある。
CUTLERYのクリストフルは、バターナイフその他もある。日本人のシェフにも人気がある。秋絵が手にしたものは、13650円のものだ。続いて幸次郎も同じ渋い銀色の優美に曲がったフォークを手にした。その時、そのフォークにも秋絵の色気が感染していたらしく、なぜならまとまったフォークを取る時は、他のものにも触るから、
だめ押しの形で幸次郎の小さなものを大きくしていった。
彼がフォークを小麦色のパスタに突き入れた時に、秋絵が口を丸めた後、
「おいしいね、このパスタ。」
と話しかけて来た時は、すでに幸次郎のイチモツは秋絵の股間より少し高めのところに向けて勃起していた。秋絵は幸次郎の前に座っている事もあって、白い太ももをダランと広げて座っている。純白のパンティは、そのテーブルの下に屈めば見えるはずだ。
秋絵の問いかけに幸次郎は、ハッとなり、
「う、うん。」
とまだ食べてないパスタについての感想を答えた。全勃起させているので、小さな声しか出せない。他のテーブル席には、横に三メートル離れたところに老夫婦が座っているだけだった。その老夫婦の頭の色は、どちらも半分白くなっていた。黙々とフルコースを食べているらしく、幸次郎には眼もくれない。
パスタの上に小さな肉が載っていたので、幸次郎は食器かごから15120円のテーブルナイフを取り出して切り始めた時に、テーブルにあったおしぼりを床に落としてしまった。拾うために屈んだ幸次郎の眼に飛び込んできたのは、むにむにとした白い太ももを広げている秋絵の姿態で、パンティが丸見えな上にぴっちりとはりついた布地に真っ直ぐな縦の線が入っているし、それが少しぷるぷると揺れて甘い匂いが幸次郎の鼻に侵入する。
両膝を床に着くと幸次郎は、秋絵のパンティに顔を近づけて割れ目がくっきりと浮き出ているところにキスをした。
テーブルの上の秋絵の顔は、感じているところを押し殺した表情だ。幸次郎は秋絵の顔が見たくなって、おしぼりを拾うと席に戻る。秋絵の顔は甘く歪んでいたが、非難の色はない。いつもは、後数時間もすれば布団の中で、ちんことまんこを擦り合わせている時間帯だ。幸次郎は、もう一度屈んでテーブルの下に潜ると、秋絵の白い布で覆われた縦のスジを見てみた。その部分は、じわりと水分に変色している。
座りなおした幸次郎は小さな声で、
「トイレに行こうよ。」
と秋絵の眼を見て囁いた。すぐに彼女は前髪を下に揺らした。そのついでに彼女の豊かな胸も小さく揺れた。
連れ立ってトイレに入った二人は、上は服を着たまま、ズボンとスカートをおろして、秋絵はパンティも膝まで下げて、幸次郎はブリーフの切れ目の中から出した肉体の巨棒を逆三角形の秋絵の陰毛の下にある濡れた柔らかなもう一つの口に、もどかしく挿入させた。
秋絵は頭を後ろに、のけぞらせると、
「ああーん。すてきだわあー。」
と声を高らかに出した。その時、幸次郎の両手は秋絵の白い大きな二つの尻肉をたっぷりと、掴んでいる。柔らかな尻の肉は幸次郎の指をのめりこませた。

もう一つのテーブル席にいた老夫婦の片方、奥方の方が手にしていたフォークを止めて、
「あなた、今、若い女性の声が聞こえませんでした?」
と口をもぐもぐさせている夫に問うと、
「ばかだな、おまえももうボケ始めているよ。声なんか、なんにも聞こえはしない。このおいしいイタリア料理に集中できないなんて、どうかしてるよ。まったく。何と言うか・・・。」
老婦人は顔を赤らめると、
「そうですね。そう言えば、そうですわ。長い間の欲望が声になって、外から聞こえてきたのかもしれませんわね。」
老夫は苦く笑うと、
「なんの欲望だ?もしかして、あれか?」
と声に出す前に店主の方をチラと見た。店主は彼等とは別の方を向いて、距離も十メートルはある。イタリア人みたいな日本人の中年店主だ。聞いている風には見えなかった。
老婦人は、ますます顔を赤くすると、
「そうです。あなた。あれなんです。」
「へへえー。帰って、するか?あれ。」
「いいですわねー。三十年ぶりになるのですかね。」
老夫は笑いをこらえた顔になり、
「は。よく覚えているよ。おれは、十年前に・・その・・・。」
老婦人の顔は、きっ、となると、
「浮気ですね。あ・な・た。」
「いや、そのね、勃起したのは十年前が最後だったかなー、と。」
「うまい、言い訳ですこと。」
「まあまあ、食べてから帰ろうよ。帰りに精力剤の店に寄るからさ。それで、大丈夫だと思う。」
老婦人の顔は、嬉しそうになった。首を二回もタテに振ると、
「さっきの声は、わたしの気持ちだったのですよ。やっぱり。」

赤い壁紙で内装されているトイレの中で、腰を逞しく振りながら幸次郎は右手で秋絵の口を押さえた。彼は小声で、
「おれも、いいんだ。腰がとろけそうだ。けど、秋、我慢しろよ。」
と彼女の耳たぶの近くで囁く。
自分の頭の左側で秋絵の顔がうなずいたのを感じると、彼は囁いた彼女の耳たぶを舐めまわして軽く噛んだ。彼女は、彼の手の中の口で、
うふん、いやっ
と悶えた。その感じられた声が幸次郎を昂ぶらせる。彼は、彼女の細い首すじにも自分の舌を長くして這い回らせた。秋絵の首の周りは、幸次郎の唾液でいっぱいになる。彼女の尻の肉から左手だけ離して、彼は彼女の右胸を揉みまくり続けた。知的な秋絵の目は、すでにトロンとなっている。

痴漢一発 体験版

痴漢一発
 東京の山手線の電車内でおれは、前に立っている女の背後に立った。三十代後半のその女は、いかにもキャリアウーマンという雰囲気を全身から漂わせている。時刻は会社から帰る時間のラッシュアワー。東京のラッシュアワーなんて、夜遅くまで続いているよ。
夏だから軽装のその女の尻に、おれは軽く手のひらを当てた。女が感じるか、感じないか位だ。すると、都合よく電車が揺れて人が一方向に倒れ掛かる。
その方向が女の尻のほうだったから、しめたものだ。おれは、むんずと女の尻をつかんでやった。しばらく、おれの後ろから多くの乗客が、おれを押していた。
その女の尻は、柔らかくて心地よかった。だから、痴漢はやめられないのだ。女の髪は短めで、顔も人に命令しているような顔だが、それに反してスカートを履いている。そのスカートも薄い布なので、パンティの感触まで味わえた。
女の身長は平均よりも高め、だが、百七十五センチのおれよりは遥かに低い。
女は、おれが尻をつかんだ瞬間、身をくねらせた。すかさず、おれは女の足の間に右手を入れて、その女のマンコのあたりに指をすべらせて、ぐっとなぞってやった。車内は満員で、女の前に座っているのは眼をほとんど閉じた初老の男性サラリーマンだ。
また、後ろから多くの人がおれを押してきたので、おれは左手で女の左の乳房をムンズとつかんで、そのまま揉みしだいた。
おれの両手は、女のマンコと乳房をそれぞれつかんでいた。そのまま三十秒位、時間が経った。女の顔は見えないが、悔しそうな表情をしているに・・お、電車の窓ガラスに女の顔が見える。さっきまでの威厳のありそうな顔つきから、快感をこらえている女の顔に変わっている。
この女、感じているんだ。だから、痴漢はやめられない。そうとも、世間ではなんといおうと、おれはEことをしているんだ。
その女の乳房と尻は、普通より小さめだったが弾力はある。女は、おれの両手に大事なところを握られて気持ちいいのを我慢している。
電車内で悶え声など、上げられるわけもない。
一分もそのままにしていると、おれの後ろの乗客が元の体勢に戻ったので、おれはすばやく両手を外した。女は窓ガラスに映っているおれを見つめたが、すぐに眼をそらした。
おれはサングラスを掛けて、口にはマスクをしている。平たい帽子をかぶり、鼻の下に付け髭までしている。
まだ、する事があった。おれは、勃起したものをズボンから取り出すとシャコシャコと右手でしごいて、どくっと女のスカートに射精してやった。
この動作は平静な顔や態度をしてやらないと、いけない。物事にはなんでも、慣れというものがある。過去に数十回の体験を持つおれは、顔色一つ変えずに電車内で女に射精することができるのだ。
女のスカートの尻には、おれの放った白い液体が大量に付着していた。
おれの両隣の男性サラリーマンは、携帯電話でネット閲覧でもしているらしく、少しもおれがやった事に気がつかなかった。

電車は大森というところに、停まった。おれの精液をスカートにつけた、そのキャリアウーマンは電車を降りた。

と話す霧下才一(きりした・さいいち)の話を、私は満足感を持って聞いた。これで、いい。これで、いいんだ。

霧下才一は、月に四回から八回は痴漢をしていた。あまり回数を増やすと、捕まってしまうと彼は言う。私は、霧下才一の高校の同級生で、福岡市から東京に出て就職した。霧下君は、最近、上京してくる。というのも、彼は今も福岡市に住んでいるという。
霧下君は、
「痴漢の本場は、やはり東京だね。日本でもっとも、やりやすいよ。福岡市で痴漢の達人になれば、東京は痴漢天国だ。おれは、福岡市の西鉄バス内とかでも鍛えてきたからな。
それともうひとつ、見て見ぬ振りをする東京の人間。これも、やりやすい原因のひとつだろう。」
と都内の喫茶店で堂々と、私に語った。
東京というところは、JRと私鉄が発達したために、バスはそれほど盛んではない。その結果、大分部分の人は、電車で通勤する。その中でも埼京線という路線がもっとも痴漢が多い、といわれているわけだが、これは訴える女性が最も多いと言う事も、できるかもしれない。
霧下君は、金にゆとりのある生活を送っているらしい。が、飛行機ではなく新幹線で東京まで来る。月の半分は、東京で暮らしているらしい。新幹線の車内でも痴漢をするらしい。
彼は、こう語る。
「新幹線の自由席で女の隣に座れば、女が降りるまで痴漢し放題だ。女の到着駅では、とめてやるのがエチケットだけどね。特に女が窓際で、横一列に誰もいない場合は、最高度な状態だ。パンティの上からではなく、直接マンコに指を入れるのは当たり前で、時々、新幹線の女客室乗務員が歩いて通り過ぎる事もあるが、気がつかないよ。」

私は普通のサラリーマンを続けて、もう三十歳だし、霧下君も同じ年齢だ。私は、
「霧下君。就職した事はないのか。」
と聞いてみると、
「いや、ないね。又、おれみたいに痴漢の常習者が、万一、捕まったら会社も迷惑するだろう。まあ、おれは今まで一度も捕まってない。痴漢は申告罪なんだ。女が訴えない限り、捕まらないよ。」
と外国煙草の煙を吹かしながら、そう答えてくれた。
「君が痴漢するようになった、動機ってなんなの?」
「ああ、それは色々あるよ。ただね、一つは親父だ。おれの親父は地方公務員だったが、仕事中にアダルトサイトを閲覧してクビになった。母には退職の理由を言わなかったらしいけど、高校を出てアルバイトをしているおれには、
「才一。父さんはな、アダルトサイトを仕事中に見てクビになったんだ。おまえは、そうならないよう注意をしろよ。親子なんて、よく似ているのだから。」
と母のいない時に、おれに語ってくれたよ。」
「そうだったのか。でも、それなら・・・。」
「痴漢とかもしないように気をつけるはずだ、ということだね。でも、おれは親父の敵討ちみたいな気持ちもあるんだ。」
「なるほどね・・・。」
私は、分かったような、よく分からない気持ちになった。それで、次の質問をした。
「君が最初に痴漢した女性は、どんな感じだった?」
霧下才一は、眼をキラキラと輝かせると、
「高校の時の教師だよ。英語の教師だった。おれは、英語が苦手だったから、あやうく落第しかけたけど、その時もその新任の女教師は冷淡だった。私大出で、金持ちの娘だという評判はあったね。
なんかモデルみたいに背が高くて、髪は長いし、それで結構美人顔なんだ。
落第しないための授業に出たから、なんとかなったけど、学年で最低の英語の成績だったらしく、その英語の女教師はおれを馬鹿にしたような態度でその後も接した。
高校を卒業してある日曜の午後、福岡市のある地下鉄の駅でおれは、その女教師を発見した。彼女とおれは視線が合ったが、向こうはおれを無視したよ。その女教師の隣にはハンサムな若い金髪の男性が立っていた。染めているんじゃなくて、白人だよ。
おれと彼等は二メートル位しか、離れていない。電車が来た時は、同じ車両に乗り込んだ。座席は満杯なので、それぞれ吊革につかまって立つ。
おれは、女教師の後ろに立ってしまったんだ。彼女の左側に金髪の白人男性が立っていた。その女教師とおれの身長は同じくらいなんだ。金髪野郎は、おれより、あと五センチは高い。
電車は発車した。おれは下に視線を向けると、女教師の尻に眼が行った。薄手のスカートは、大きくふくらんでいた。意外と、巨尻なんだなとおれは思った。それが時々、ぷるぷる、と左右に揺れた。高校時代の屈辱をおれは、はらしたくなった。
右手を女教師の尻に当たるかあたらないか、という程度に接触させる。電車が揺れた時、おれはグイッっと女教師の巨尻を掴んだ。ピクンと彼女の肩が揺れると、顔だけ振り向けておれを見た。
あっ、という顔をすると女教師は何も言わなかった。自分の教えた生徒に痴漢されるなんて、という思いが顔に現われていた。
おれは再び、彼女の尻をいやらしく撫で回した。柔らかく、ぷるぷるした彼女の尻の肉の感触に、おれは勃起していた。それでズボンの前に布を突っ張らせているモノを、彼女の尻の割れ目の辺りに押し付けた。ズシ、と彼女の尻の肉は、おれのズボンのふくらみを受け入れた。
尻の割れ目のあたりと思っていたが、それは女教師のマンコの割れ目だったのだ。ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトンと電車が揺れる度に女教師の巨尻もおれの勃起物を受けたまま、揺れている。
(空いた手が、もったいない。)
そう思ったおれは、両手を女教師の背中から、たっぷりと盛り上がった乳房に当てて、柔らかく揉んでやった。何かに耐えている感じを彼女の後姿は、表現している。背が高いので、座っている乗客には彼女の胸の位置は高くて見えないのだ。
女教師の隣の白人男性も背が少し高いためか、おれの動きに気がつかなかった。それから十分ほど、おれはズボンの上からだったけど自分の勃起したモノを女教師の後ろから彼女の割れ目に当てていた。おれは自分のイチモツから彼女のマンコの割れ目が、おれのモノを咥える様に動くのも感じた。
(なんだ、おれのチンコを欲しがっているようだな。)
とおれは思ったので、天神駅に着いて車両を降りた女教師に、
「先生。お久し振りです。」
と声をかけた。白人共々、おれを振り向くと、
「あら、霧下君ね。久し振りだわ。」
と顔を赤らめて返事をした。彼女の視線は、おれの股間に走っていた。おれは、まだ勃起させていたのだ。それを女教師、幾野育子(いくの・いくこ)は、おいしそうに眺めて、
「よかったら、お茶でもしない?」
とおれを誘う。
「いいですよ。落第しそうな僕を助けてくれたのは、先生です。」
「まあ。当たり前の事ですよ。教師として。」
と、いかにも教師風の語調で幾野先生は、答えた。となりの白人は、
「ミーは、どうしますか?」
とオズオズと幾野育子に聞く。
「一緒に行きましょう。」
と育子が答えると、
「オー、イエース。」
と納得した。
三人で天神のレストランで食事して、地上に出るとタクシー乗り場に女教師はおれたちを引っ張って行った。

タクシーでは、おれと女教師が後部座席で、おれが運転手の後ろ。白人は助手席だった。幾野育子は、
「糸島のラブホテルに。」
と教師らしく命じた。
「糸島のラブホテルって、いくつかありますよ。」
「じゃあ、一番遠いところで、いいわ。」
「わっかりましたー。」
タクシーは、快走し始めた。
すぐに幾野育子は、おれにピッタリと身を寄せると、
「今、就職しているの?」
と、さり気なく聞く。
「いえ、フリーターしてますよ。」
「そうなの。最近は就職が難しいものね。なんなら、父の会社関係で働けるようにしてあげてもいいけど。」
おれは、驚いた。さっき、痴漢をしていたおれに・・・職の世話まで考えてくれるなんて。
「それは、ありがたいですね。ぜひ、お願いします。」
「うん、任せてね。父は四十位、会社を経営しているの。東京支店が三十もあるのよ。」
「ええ、もう、どこでも構いません。」
育子は、おれの耳に両手を当てて前の人間に聞こえないように、
「さっきの、あなたのチンコ、よかったわ。これから行く糸島のラブホテルでナマで挿入してね。」
と囁いた。その手をわざとらしく滑らせると、育子はおれの股間にズボンの上から触った。すぐに、元の位置に女教師は手を戻したが。

タクシーは、国道202号線を西に走っていく。今は糸島市となったが、つい最近までは糸島郡だった。JRの前原駅近辺が、そこそこ発達した町ではある。
糸島市に入ると、国道202号線に沿ってレストランなどの店がずらりと並んでいる。途切れるところもあるが、昔はただの空き地だったのだ。やがて、右手に海が見えるようになる。それは博多湾という内湾で、小さな島もところどころに見えてくる。
幾野育子は、おれの右にある窓ガラスから見える海を見ながら、
「海水浴の季節が過ぎたら、楽しめるわ。」
と謎のような事をおれに囁いた。今は八月だけど、盆を過ぎれば海水浴客は少なくなる。
育子は自分の右足の太ももを、おれの左足のふとももに押し付けてきた。柔らかい感触が、おれの脳に股間に血液を送るように指示させる。それで、少し勃起した。
前の助手席で、
「ニホンノ、イナカ、イイデッスネー。」
という声がした。運転手は、
「いいでしょう?でも、だんだん田舎ではなくなっていってますね。」
と話した。
育子の右手が伸びて、おれの股間のふくらみに触ると又、元に戻った。彼女の顔を見ると、満足そうな笑みが浮かんでいる。
タクシーは、ラブホテル「シーピンク」に到着した。国道202号線の右は、海岸、左は小高い丘がある、その丘の上に「シーピンク」がラブホテルらしく立っていた。タクシーを降りると、潮風が鼻にきて、海は丘の上から見晴らせる。深い青色の海だ。
駐車場には車が二台、先客らしく停まっていた。運転手は、
「帰りのご用命も、ぜひ、お願いします。」
と車の中から幾野育子に頼みかけた。
「あら、ひまなんじゃない?この辺で待ってたら。」
と育子は身を少し屈めて答える。
「いえ、なんとか時間を潰します。」
「そう、じゃあ、好きにしてて、いいわ。」
「ありがとうございます。」
深々と、運転手は頭を下げた。

おれたち三人は、幾野先生を先頭にラブホテルに入った。受付は農家の青年風の男性が、野良着姿でチェックインの手続きをした。
「すみません、こんな格好で。いつもの人が急用で福岡市に行ったもんだから、畑仕事をしていたオレが呼び出されて、こんな格好しとるとです。」
と言うなり頭を下げた。幾野は、
「いいわよ、気にしなくて。ラブホテルの受付に農家の作業着というのも面白いわ。」
と賛美した。
鍵を幾野が受け取って、先に歩いて行った。受付から最も遠い部屋、その部屋が海がよく見える部屋だったのだ。
育子は、全員部屋に入ると鍵をかけた。それから、おれに歩み寄るとキスを長くした。

痴●一発

110円

レズしたいっ!体験版

レズしたいっ!

 白花百合子は、もう二十二歳になる。福岡県福岡市内中央区にある不動産会社に勤めるOLだ。身長160センチ、体重60キロ。スリーサイズは、上から86>58>88という極め付きの体は洋服を着てもハッキリとそのふくらみが見えるものだ。顔はすこぶる美人で、博多美人というおもむきだ。という彼女だが、彼氏はいない。
彼がいない理由の一つは、職業によるものだろう。不動産会社は日曜も仕事がある。
 最近の世相では、女性で二十二歳で独身というのは別に珍しくもなくなっている。
だから、もう二十二歳という表現は当節不自然だが白花百合子としては普通の女性よりも結婚願望が強いので、彼女の気持ちとしては、もう、という気持ちなのだ。
彼がいないもう一つの理由として考えられるのは、彼女は女子中学、女子高と福岡市内にある私立の学校に通わされた事にあるだろう。
おまけに女子中、高と空手部に在籍していたので、これも男がいない理由かもしれない。つまり、白花百合子には隙がないということだ。
以前、二十歳の頃、通勤している地下鉄で朝、彼女は痴漢に会いかかった。彼女の豊満な尻に触ろうとした若者の手をハイヒールを履いた片足で蹴り上げて、その二十代の学生は手にひびが入る怪我を負った。激痛にしゃがみこむ、そのやせた男を見おろすと百合子は、
(わたしは、ちゃんと見てたんだからね。あんたの右手の動きを。)
と心の中で言い捨てた。
さすがにその件は、百合子も幾分気の毒に思えたので彼女は美容院で髪の毛を短くしてもらった。椅子に座ると、
「スポーツ刈っていうのかな、あれにしてください。」
「ええっ、男の子?のようにですか?」
「ええ。その方がいいかと思って。」
「わかりました。」
それで百合子の頭は男子のように、短髪になった。会社に行くと課長が驚いて、
「白花君。びっくりするな。でも、似合うよ。不動産会社勤めには、それでいいと思うよ。」
「ええ。変な男がいましたから。」
「ああ、客の中にはたまにそんなのもいるだろうね。その髪型だったら安全だろうな。」
百合子は詳しくは答えずに、
「そう思います。これでお部屋の案内も、もっと多くできますわ。」

百合子は男性経験は、なかったが処女ではなかった。百合子の処女を奪ったのは、彼女が通う空手道場の女師範、六月(むつき)さね子だった。それは百合子が十八の歳で、女子高の夏休みに夜、いつものようにその道場で稽古を終えた後に六月さね子は寄って来ると、
「女らしくなったわね。わたしが空手の秘儀を教えるのに、ちょうどいいな。」
と耳打ちした。六月は三十歳だ。空手歴も長いし、手には拳ダコがあり肩幅も広い。胸は小さく、しかし尻は大きかった。眼は細長く、鼻は高い。百合子のようにパッチリと開いて、二重まぶたの瞳とは正反対で六月さね子の眼は一重だ。さね子は、その空手道場の館長の六月武郎の一人娘なのだ。まだ、独身である。その時、道場のみんなは既にいなくなっていた。さね子は洋服に着替えると、
「その技を身につける前に、百合子が経験しなければ行けない事があるの。それは、シティホテルでね。」
「おす。わかりました。」
「わたし達、メスだからめす、って言ってもいいわよ。って冗談よ。行きましょうか。」
茶色の服を着た百合子を六月女師範は、促した。
その空手道場は福岡市南区井尻にある。百合子の両親は東区香椎の辺りに住んでいて、百合子も小学校卒業までは東区で育ったのだが、私立の女子中学に通うのは大変なので、その学校に近い駅の井尻のマンションに百合子は一人暮らしだった。その井尻の駅近くにある空手道場、練心館こそ百合子が中学入学と同時に通い始めた道場なのだ。百合子は中学でも空手部に入った。その練習が終わると練心館道場に通う。
おかげで高校三年の夏に百合子は、女子空手日本一になった。
(六月師範も、わたしに期待してるんだわ)百合子は、これから始まる師範の指導に心をときめかせた。
井尻にはホテルはないので、一つ北に行った大橋駅近くのシティホテルに二人は入った。六月女師範は片手に大きな黒いバッグを持っていた。部屋に入ると、そこはシングルでベッドは一つだ。フロントの三十代の男性は変な顔をしていたっけ。と百合子は思い出す。さね子は、
「泊らないし、これでいいのよ。さあ、裸になって。」
と指示する。ええっ?裸にいっ?百合子がそう思ってボンヤリしていると、目の前の女師範はスルスルと洋服から下着まですべて脱いで全裸になった。筋骨逞しいといっていいような体に、小さな胸と黒々とした足の付け根のアンダーヘアが百合子の眼に入った。百合子も急いで裸になる。高校生にしては発育した胸と尻が女師範の眼に入ると、
「百合子、いい体しているわね。これから貴女が習う秘儀は男に使うものだけど、その前にあなたがやらなければいけないことはね。」
師範は飛ぶより早く全裸の百合子、その頃は少し長めの髪の毛の百合子に近づくと彼女の肩を抱いてキスをした。初めて触れる女性のくちびるの甘みに百合子は、ぼーっとなった。そのまま、さね子は百合子の口を自分の舌で開けると十八の百合子の舌にくにょくにょと舌を絡めていく。さね子の左手は百合子の右胸を優しく揉み始めていた。(ああっ、師範はレズだったんだあっ・・)と揉みしだかれる胸からくる快感を感じながら百合子は思った。さね子は自分のアンダーヘアを百合子の同じ部分に当てると、腰を左右に振って擦りつけた。百合子は自分のその部分が濡れてくるのを感じた。さね子は舌を抜くとキスをしたまま、百合子を抱きかかえてベッドの上におろした。閉じたままの百合子の白い両足を、さね子は素早く大きく開かせた。その上にさね子は乗ると、又アンダーヘアを合わせた。今度はさね子の女性器が百合子のものに当たった。ふたつの陰唇が合わさると、さね子は激しく男性のように腰を振り始めた。ぐにょぐにょと割れ目の擦れる音がし始める。百合子の頭の中は透明になっていった。さね子は百合子の両方の乳首を一つずつ、口に含むと舌で愛撫する。百合子は自分の乳首が硬くなっていくのを感じた。次に、さね子の舌は百合子の首筋、耳を舐めまわす。百合子は自分の股間が、じっとりとするのを覚えた。さね子の腰の動きが早まりだした。さね子は、
「百合子、もうわたしイキそうだわ。ああっ、出る!!!」
さね子は、びゅっと出した潮を百合子の柔らかな淫唇にかけてグッタリとした。百合子は自分のアソコが師範の出した液体で濡れたのを感じた。百合子も何か、イクという感覚を覚えたような気がした。
さね子はすぐに立ち上がると、バッグを置いてあるサイドテーブルのところに行き、バッグの中から何かを取り出した。ベッドに白いふっくらとした足を大きく広げて寝ている姿勢から、百合子が見たものは天狗のお面を手に持つ女師範の姿だった。さね子はその天狗の高い鼻のお面から出ている紐で、自分の腰に巻きつけるとそれは師範が勃起したイチモツを現したようだった。その鼻は、さね子の腹部から四十五度の角度をもって上に跳ね上がっていた。(師範、まさかそれで・・・)百合子が思う間もなく、さね子はベッドに戻ると百合子の上に覆いかぶさって、天狗の長い太い鼻を百合子の若いおまんこの中に挿入していった。(ああんっ)百合子は、かすかな痛みと強い快感を挿入の瞬間に覚えた。さね子は天狗の鼻を根元まで百合子のかわいいマンコに入れ終わると最初はゆっくりと、やがて激しく腰を振り始めた。百合子は小さな声で、
「ああんっ。」
とかわいい悶え声を洩らした。さね子は腰を目まぐるしく動かしながら、百合子に顔をくっつけてくちびるを合わせた。天狗の鼻は硬いゴムのようなもので、できていた。さね子は律動を早めていくと、
「ううっ、又、イクわっ。」
そう叫ぶと、ぐったりとなった。天狗の面の中に潮を出したのだ。百合子もその時は、失神しそうな状態になっていた。
やがて身を起こすと、さね子は天狗の面を外して、
「これで百合子も女になったのよ。わたしを女にしたのは父。でも父が自分のものを娘のわたしに入れるわけはないわ。父は自分の体にわたしが今、あなたにしたように天狗のお面をつけてわたしに挿入したの。それは、わたしがやはり貴女と同じように十八の夏だったわ。」
ベッドに腰掛けて、遠い日を思い出すような眼をしながら女師範はそう語った。
(えええっ)と百合子が思うと、さね子は苦笑いして、
「でも父は変態じゃないのよ。わたしに空手の秘儀を教えるためだったの。そのためにわたしの女性器を打ち破ったのよ。それからわたしの修行はまた、始まったのね。」
さね子は又、バッグのところへ行き、天狗の面をしまうと又、中から何か取り出した。今度は黄色いバナナだった。まあ、赤いバナナがあるわけもないけれど。女師範は、バナナを立ったまま皮をむきベッドに戻って腰掛けた。百合子も起き上がってベッドに座った。立膝をして手を膝に置いている。
さね子は柔らかな感じで足を開くと、手に持ったむいたバナナを自分のマンコに入れていった。あ、と息を呑んで百合子が見ていると、さね子は、
「うむっ。」
と小さく声を出した。右手のバナナを上に上げると、そのバナナは半分に切れていた。半分は女師範のマンコの中に入っている。百合子が仰天すると、さね子は、
「これが秘儀、マンコ割りなのよ。最初はバナナなんかの柔らかいもので、練習するの。」
と落ち着いて説明した。
それから再び、さね子はバッグのところに戻り中からキュウリを取り出して百合子を見ると、
「見てて、これを割る。」
直立しているさね子は脚を広げると、右手でキュウリを自分のまんこの中に入れた。
「はっ!」
と気合をかけると、キュウリはペキンと折れて彼女はそれを右手で高く上げてみせる。
「これくらいできるようになれば、マンコ割りは完成半ばってところかな。」
「すごいですね、わたしも練習すればできるようになりますか。」
百合子が賛嘆の面持ちで聞くと、
「ええ、もちろんだわ。あとで男を相手に実演してみせるわね。大橋駅近辺にもナンパ野郎はいるから。」
「わたしも、ナンパ男を相手にするんですか。」
「いえ、あなたはまだいいわ。マンコ割りで男がどうなるか、見てみることね。」
「ええ、見たいです。」
「これは一つの秘儀だから、最終的にそういう状況になった時に使うものなの。指で男のちんこを掴めれば、わたしならね・・・。」
全裸のさね子は、バッグの中から財布を取り出すと百円玉を右手の親指と人差し指でつまんだ。
「エイヤーっ!」
すると百円玉は少し曲がってしまった。又しても唖然とする百合子だった。
(あれじゃ、男の子のものは・・・)
百合子は、まだ見た事のない男のちんこを想像していた。
さね子は百円玉を財布にしまいながら、父以外の初体験の相手を思い出していた。
それは六月さね子が二十歳の歳で、彼女が昼間はコンビニでアルバイトしていた時の店長だった。コンビニのアルバイトといっても接客をしていたわけではなく、さね子は裏で商品の仕分けや搬入などをしていた。その店長は四十過ぎの妻子持ちだったが、奥さんが三つ年上でセックスレスが続いていたようだ。その頃のさね子は、すでに巨尻となっていたのでコンビニの制服は尻のところが破れそうなほど膨らんでいた。黒の眼鏡をかけた店長は、いつもさね子のとなりで仕分けなどを一緒にした。その時に、さね子は自分の尻のあたりに視線を感じるのだったが、それはその店長が度の強い眼鏡でしゃぶるように眺めていたからだ。店長は三宅という名前だった。三宅雄三というのがフルネームだ。
最近、三宅雄三は新しく眼鏡を買った。それは六月さね子の尻をよく見るためである。
昼の十二時頃、客も店内は多くてレジも忙しいが裏で働くのも忙しくなる。その裏では店長とさね子の二人が商品の仕分けをしていたが、ついに店長の手が六月さね子の尻に触れた。さね子は、それを感じたけど何も言わなかった。三宅は彼女により近づいて、
「六月君、ホテルに行かないか。君は四時で終わりだろう。ぼくは外に出る用があると言えば、誰も何も言わないし。」
「いいですよ。」
さね子は、顔を赤らめた。三宅は体格もよく身長は百九十センチはあり、体重も百キロは超えていただろう。プロレスラーのような体なのだった。だから、強い事へ憧れを持つ六月さね子は三宅雄三の露骨な誘いにも抵抗しなかった。それに三宅を独身だと思っていたのだ。
その時、店のほうから若い女性店員の声がした。
「店長、レジをお願いします。」
三宅は慌しいレジを手伝いに行った。袋詰めをしながら三宅は、
「ただいま炭火たこ焼きが、十円引きとなっておりますよ。いかがですかー。」
と声を出したりしているのが、裏で働く六月さね子の耳にも入った。
その店は、井尻駅近辺のコンビニだった。四時になると客は少なくなり、六月さね子は店長の車に乗って竹下駅近くのラブホテルに入った。
三宅は部屋に入ると、
「おれは、これからまだ仕事があるから。早くしないとね。」
と話すと、さね子を抱いてキスをする。口を離すと、さね子は、
「結婚すれば、こんな事、毎日できますね。」
と三宅にもたれかかって口にすると、
「ぼくはもちろん結婚してるよ。でも、もう妻とはセックスもキスもしてないな。」
(なにいっ!)
というのが、さね子の心の中だったが顔には出さずに、
「それは、つまらない結婚生活ですね。」
「そうさ。だから君が必要だ。」
三宅雄三は、さね子の私服を脱がせようとしたが、
「あっ、わたし自分で脱ぎます。」
「それじゃ、ぼくも脱ぐよ。」
二人は、手早く全裸になった。三宅は、さね子を抱え上げて彼女の尻を揉むようにしながらベッドに降ろした。三宅の体は少し脂肪がついていた。正常位で三宅が、さね子に硬くなったちんこを挿入した。さね子は、特に何も感じなかった。思いはあるものに集中していった。三宅が腰を動かし始めた時、さね子は、
「秘儀、マンコ割り。」
と呟いた。上の三宅は、
「えっ?学割、かなんかの事?」
と聞き返したが、次の一瞬で、
「ああああーっ。痛いーっ!」
と狂ったように絶叫した。三宅のちんこは、さね子のまんこから滑り出たが、それはダラリとしていた。
立ち上がった六月さね子は、服を着ると、
「これでもう、奥さんと何もできないんじゃないかしら。」
と冷たく言うと、部屋を出て行った。さね子は、その辺が竹下である事を知っていたので、井尻の家に帰るのは難しくなかった。
それから、さね子はそのコンビニには行かなかった。噂では、その後の三宅雄三はコンビニではナヨナヨとした感じで仕事をしているという。中洲のゲイバーで、夜働いている三宅を見たという人もいた。
実際にあのラブホテルから、三宅は救急車で運び出されたのだった。さね子が出て行って、しばらくしても出てこないのを不審に思った若い男のホテルマンが部屋に見に行くと、三宅雄三は気絶していた。
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六月さね子は服を着ると、全裸の百合子に、
「わたしチョット、外へ出てナンパされてくる、というか連れてくるから待ってて。」
と告げてホテルの部屋を出て行った。
そのホテルから大橋駅西口までは、徒歩二分である。西口前の路上には、金髪の若い男性が一人立って通りかかる女性を物色していた。身長180センチの痩せ型。二十代前半だ。青いジーンズに赤いシャツ、靴はスポーツシューズを履いている。ジーンズのポケットに片手を入れて、その若者は六月さね子に近づいてきた。夜の九時頃だ。サーファータイプのその男は、
「ひまなら、お茶でもどうね。」
と福岡言葉丸出しだ。さね子は、
「いいわね。それよりホテルに行こうよ。もう部屋はとってあるのよ。」
若者は眼を輝かせた。その時、通りかかった若い女性が、
「わたしもホテルに行きたいな。」
と割り込んできた。引き締まった体の二十代後半の中背の女だ。サーファータイプは、
「いいねー。3Pできそうやね。」
と臆面もなく口に出すと、さね子も、
「いいよー。まずは、あんたたちのプレイを見たいな。」
中背の女は、
「絡んだらいいよ。その方が楽しいけん。」
とこれまた福岡言葉で答えた。
三人は、並んで百合子の待つホテルの部屋へ。さね子がまずドアノブを回して入ると、百合子はもう服を着ていた。サーファータイプは百合子を見て、
「こらあいい。4Pできるやない。」
さね子はニヤニヤして、
「まず、あんたたちのプレイを見たいのよ。」
中背の女は、自分でさっさと服を脱ぎ始めた。サーファータイプも、
「おれも脱ぐたい。」
中背とサーファータイプは、ほぼ同じに全裸になった。若い男は中背の女の裸体を見て、するするすると長めのチンコを天井に向けていった。中背の女は、男にすぐにしがみつくと眼を閉じて口を突き出す。男は屈んで女にキスすると、抱えてベッドに置いた。女は自分から四つん這いになり、尻を突き出す。男はその女の尻の間に見えている大きな割れ目に挿入していった。
「あはんっ。いいー、よかとよ。」
と女は短めの髪を振り乱して悶えた。百合子は、その女性の脱ぎ捨てた服の近くに何か手帳のようなものが落ちているのを見つけた。近づいて、手にとって見ると、それは警察手帳だった。中を開けると
巡査 島木園子
の文字の上に、今、ベッドの上でサーファー風の男に後ろから突きまくられている女性の顔が写真に写っている。百合子は、
「お楽しみ中、すみませんけど、島木さん警察手帳を落としてますよ。」
それを聞いたベッドの上の女は、
「今、いいところよ。服の上に置いといて・・・ああっ、いい。」
体をのけ反らせる。男は、
「あんた、警察官か。まあ、アフターファイブは自由だもんな。おれと、こうやるのも犯罪じゃないし。」
ズンズンズン、と男は島木の柔らかい尻を両手で揉みながら突きまくる。
「そうねっ、なにやってもいいのよ。あはん、ストレスたまって、ああん。この前、同僚の婦警と便所の中でレズしてしまったの。でも、あなたの棒がいいわああ。」
島木園子は、悶えながら涎を垂らした。男は、腰のスピードが速まってきた。両手で島木の小ぶりのおっぱいを揉みながら顔を島木の耳に近づけると、
「もう、出そうだ。中に出してもいいのかっ。」
と歯を食いしばって聞く。
「いいわあん、ああ、ピル飲んでるのよ。だから、大丈夫。」
「よし、いくぞー。島木っ。」
「園子って呼んでっ。」
「園子っ。いくいく、出るーっ。」
ドピュピュッ、と男は精子を放出した。
六月さね子は、感心したように、
「よかったよー。まだ婦警さんのアダルトビデオはないみたいだから。近くで見れて、よかったです。」
島木園子は、だらりとなった男のペニスを手にとってペロリと舐めると、
「ああ、おいしいなー。まだ、やりたいけど、あなたもしたいんでしょ。」
と、さね子に顔を向けて言う。さね子は、無言で服を脱ぎ始めた。すぐに全裸になると、
「わたし複数プレイは苦手なのよ。よかったら、そこにいる百合子とレズしたらどうですか。」
島木園子は立ち上がると、百合子に近づきキスをしようとしたが、
「男との余韻を楽しみたいから、ごめん。又、大橋駅近くでナンパされれば楽しめるから。わたしは失礼します。」
そう言うと婦警らしく服を着て、出て行った。サーファー男は、
「あいつのマンコ、締りがよかったなあ。」
と思い出すように語ると、さね子は悪戯っぽく、
「そうかあ。締まりのいいマンコがいいのね。じゃ、わたしの試してみる?」
さね子は裸身をベッドの上に置いて、足を大きく広げた。サーファー男は、さね子の濃い目のヘアを見るとすぐに勃起した。
「試すよー、いく。」
男は、さね子の両脚を高く上げて素早く巨大なソーセージを湖の中に沈めた。男は、
「いいなー。閉まり、いいよ。」
「秘儀、マンコ割り。」
と、さね子は小さく呟いた。その途端、塗炭の苦しみを顔に浮かべた男は、
「ああっ、折れるーっ。」
と絶叫すると、小さくなったソーセージをさね子の鋭利のようなマンコから抜き出した。そのまま、男は気絶していた。男のシンボルは、根元から折れたようになって垂れ下がっていた。さね子は立ち上がって、男を見下ろすと、
「これでも手加減してるんだから。有難く思いなさい。」
と宣言して、百合子の方を向くと、
「百合子、出るわよ。」
「服は着ないのですか。」
「それは、着るわよ。」
素早い動きで六月さね子は、洋服を身につけて、
「行くわよ。この男は、あの女にだけイッタけどさ。」
あはは、とさね子は笑った。ホテルを二人が出ると、大橋駅西口近くであの婦警、島木園子がナンパされてベンツに乗り込むのが二人の目に鮮やかに映った。